君の手を掴むための遠回り


​俺は瑠華の手を包み込み、そっと自分の胸元に寄せた。


​「でも、もう過去から逃げるために自分を傷つけたりしない。その分、これからの時間を全部使って、瑠華を世界で一番幸せにするって決めたから」


​瑠華は一瞬目を見開いたあと、花がほころぶような笑みを浮かべた。

そして、俺の肩にぽんと頭を預けてくる。


​「うん。幸平が遠回りしてくれたから…迷いながらも、最後に私の手を選んでくれたから、今の幸せがあるんだと思う。だからね、私はあの9年間も、これからの時間も、全部愛おしいよ」

​「瑠華……」

​「これからは、ずっと一緒だよ。幸平」

​「……ああ。ずっと一緒だ」


​夕空の下、俺たちはそっと唇を重ねた。

甘くて、温かくて、胸の奥まで幸福感で満たされるキス。

かつて誰と肌を重ねても得られなかった
''本当のぬくもり''が、ここにはあった。
​
鎖はもう、どこにもない。

遠回りをしてしまった不器用な俺たちだけど、これからは互いの手をしっかりと握り締め、真っ直ぐな光の中を共に歩んでいく。