彼女は自分の胸を拳で強く叩きながら、詰まった声で言葉を吐き出した。
「私、神楽くんのことが本当に好きだったの……! だから、いつか私だけを見てくれるって信じてた。でも、無理なんだよ……! 神楽くんの心の中にいる橘さんは、私がどれだけ頑張っても追い出せない! 私、神楽くんの寂しさを紛らわせるための身代わりなんて嫌だよ……!」
「……ごめん……本当に、ごめん……」
掠れた声で漏れ出たのは、絞り出すような謝罪だけだった。
どんな言い訳も、どんな慰めの言葉も浮かんでは消えた。
彼女の言っていることは、何一つ間違っていなかったからだ。
一人になる恐怖から逃れるためだけに彼女の真っ直ぐな好意を利用し、その肌を抱きしめている最中ですら、心の中ではずっと瑠華の名前を叫び続けていた。
目の前で泣きじゃくる彼女の傷に絆創膏を貼ることすらできず、俺はただ自分の汚さと卑劣さに押し潰されそうになっていた。
「謝らないでよ……っ! 謝られるのが一番惨めだよ!」
彼女は涙を乱暴に袖で拭うと、俺の手元────
あの日彼女にねだられて着けた、もうすっかり指に馴染んでしまったペアリングを悲しそうに見つめた。
「神楽くんは、誰かと付き合ってちゃ駄目なんだよ。……ちゃんと自分の本当の気持ちと向き合いなよ。橘さんのところに行ってあげてよ……!」
彼女は叫ぶと、鞄を固く抱え直し、振り返ることなく教室を飛び出していった。



