ふと視線が探してしまうのは、廊下の曲がり角や中庭のベンチ、隣の家の2階の窓。
瑠華の面影ばかりだ。
「神楽くん? ねぇ、聞いてる?」
「え…? ああ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」
彼女に声をかけられて我に返り、慌てて作り笑いを浮かべる。
どんなに誰かと過ごしていても、心にぽっかりと空いた風穴は塞がらない。
それどころか、瑠華を想えば想うほど、隣にいる彼女を利用している自分への嫌悪感が膨れ上がり、呼吸すら苦しくなっていった。
同じ学校に通い、目と鼻の先の隣の家に住んでいるというのに、俺たちの間には冷たく分厚い壁がそびえ立っていた。
お互いを意識しすぎるがゆえの完全な不通。
冷たい秋風が吹き抜ける校庭で、俺は自分が作った暗い檻の中で、じわじわと心が死んでいくのを感じていた。



