君の手を掴むための遠回り


目の前にいる彼女を抱きしめながら、心の中では瑠華の名前を叫んでいる。

そんな自分が気持ち悪くて、恐ろしくて、胸の奥が引き裂かれそうになった。

​相手の想いが深くなればなるほど、それに応えられない自分の冷酷さに耐えられなくなり、数ヶ月で逃げるように「ごめん」と別れを告げる。

​付き合っては傷つけ、別れては激しい自己嫌悪に陥る。

そして、また一人になる恐怖から新しい誰かの手を取る────。

それは恋などでは決してなく、自分を痛めつけるための歪んだ自傷行為そのものだった。

​ヘラヘラと軽い態度を演じ続けることで、心の中は泥沼のように汚れ、感情は徐々に麻痺していった。

​部活が終わり、誰もいなくなったグラウンド。

ズボンのポケットの奥深く、指先でそっと触れるのは、あの日瑠華と交換した、傷だらけの星のガラスキーホルダー。


​(ごめん、瑠華……ごめんな……)


​手のひらに食い込む冷たい金属の感触だけが、俺の死にかけた心を現実繋ぎ止めていた。

綺麗なままの思い出の中の瑠華と、泥まみれになっていく今の自分。

​その埋めようのない落差に胸を締め付けられながら、俺は明日もまた、嘘の笑顔を貼り付けて誰かの隣に立つのだった。