甘いヒーローの独り占め

智也と一緒に立ち上がると、二人でペコッと頭を下げる。


「今日はありがとうございました。会計は週明けに請求してください。失礼します」

「気をつけてね~!お疲れ~」

「また来週~!」

「はい。…桜子、そこ段差ある」

「…う…あ……うん…」


少し高くなっている敷居に気付くと、手を差し出した智也。
その手を見た桜子は、おずおずとそっと支えにして、敷居を跨いで靴を履く。


「…お疲れさまでした」


最後に振り返って会釈すると、障子を閉めてシンした音を残し、桜子を見た。
パッと手を離す桜子は、バッグを肩にかけて、顔を見られないように結っていた髪を下ろす。


「………」

「……さ」

「か、帰るんだよね!?と、ともっ、智くん駅!?バス!?」


歩き出した桜子は前を向いたまま智也に質問を投げかけた。
桜子のあとについて、店を出る智也は、フッと笑って桜子の手を掴んだ。


「急ぐとこける」

「と…!智くんなに!?てっ、手つかん…!?つ、つなっ、繋いできて…!?びっくりしたし…せ、先輩も変に思って…!」

「…変ってなに?」

「そ、それは…わ、わ、わかんないけど…!私もびび、びっくりしたよ…!!い、今も…!」


立ち止まる桜子は、顔を真っ赤にさせたまま、恥ずかしくて涙目になる。
じっと見つめる智也の手が離された。


「……桜子、時間ある?」

「え!?あ、な…あ……ない!!」

「ふっ…あるだろ」


ふき出した智也の笑顔を見ると、桜子は懐かしさを感じて口を閉じた。
すると、桜子の頭をポンポンと撫でる智也が口を開いた。


「…俺の家近くだから、おすすめの映画教えてくれ」

「……そ、それはまずいんじゃ…」

「は…?」