甘いヒーローの独り占め

ゴツッとした智也の大きな手と、あたたかい指の感触を感じながら、桜子の手は迷うように握り返せずに開いたままとなっていた。


「ははは…け、結構行きます…!ぱ、パンフレットも買って…えっと、そ、それから…」

「…桜子ちゃん、顔赤いけど、大丈夫」

「先輩、お疲れ様です」


部長の手が桜子へと伸びてくる途中、智也は部長のグラスに、自分のグラスをガチンと交わした。
そして、桜子の手をキュッと握る智也。

鈍く光る目で部長を見るが、部長はニコッと笑って、改めて智也とグラスを交わす。


「…いやぁ。黒崎くん、ほんと顔面いいね!さっき、あっちの女子が話してるの聞いてさ。…桜子ちゃんとどうなの?」

「……幼馴染ですね。小さい頃から知ってて…まぁ、これからも知ってるつもりです。だな?桜子」

「……っ…そう…だね…」


智也が桜子の耳元で囁くと、桜子は顔を真っ赤にして小さく頷いた。


「そうなんだ…じゃあ、まだ付き合ってるわけじゃないんだ?」

「………さぁ…?」

「…へ…?え…?…ぁ…」


智也の指が、桜子の手の甲をスリッと擦る。
桜子は、顔を俯かせると、恥ずかしさからギュッと目を閉じてしまった。


(…ど、どういう意味…え?智くん…?)


智也の表情も考えもわからない桜子は、痛いほど高鳴っている鼓動に耳まで赤くした。
部長は桜子へ視線を向ける。


「桜子ちゃ」

「へ~い部長~!1年生にうざ絡みするなよ~。お代わりは~?」

「うざ絡みしてるのそっちな。俺チューハイレモン!」

「…自分たちも、そろそろ時間なので失礼します。…桜子。荷物」


ようやく智也の手がゆっくりと離されると、桜子はコクコクと頷いてバッグを持った。