甘いヒーローの独り占め

智也が片方の手で顔を覆うと、深くため息をついた。


「今の忘れろ……格好悪い…」

「わ!私は…!智くんのこと、昔からヒーローみたいだなって、思ってて…ずっと、か…かっこいいって思ってるよ…!」

「…桜子」

「さっきだって…!その、かっこよかったし…ど、ドキドキして…!」


赤くなる桜子の手の甲を、智也の指がスリッと撫でる。


「ドキドキって?」

「え!?えっと…あの…っ」


智也の視線を感じながら、桜子はどんどん俯いていって、黙ってしまった。


「桜子」


反射的な顔を上げると、目元を細めて微笑む智也と目が合った。


「好きだ。ずっと」


その笑う表情は、幼い頃に見たやんちゃに笑う智也のままだった。
智也は手を伸ばすと、桜子の頬を撫でる。


「俺は桜子のヒーローじゃなくて、男として見られたい」

「…っ…」

「…もう…遠慮しない方がいいな」

「へ…」


手をギュッと握ると、人目があるにも関わらず、桜子の耳元へ顔を近づけた智也。


「桜子を…俺だけのにしたい」


風と一緒に囁かれると、髪を押さえて桜子は智也と目を合わせた。
フッと笑う表情に鼓動がドクンッと跳ねる。

初めて見る智也の“男性"としての表情に、桜子は息をのんで、つい見惚れてしまった。


「本気だから」


遠くに感じていた距離が、埋められるほどの余裕のある笑みを見た桜子。
智也は、スマホの着信に気づいて通話を始めた。


(…智くん…あんな顔で笑うんだ…初めて知った…)


止まっていた幼い頃の記憶が途絶えると、再会した日のことを思い返した。


「桜子」


スマホを切った智也が立ち上がると、微笑んで手を引いた。
自ら立ち上がった桜子は、まだ熱い顔を感じながら、智也を見る。


(智くんのこと…知りたい…)


笑う智也と手を繋いだまま、二人は日の元へ出ると、レポートのために校内へと戻っていった。