甘いヒーローの独り占め

(智くん、何のバイトしてるんだろ……って、キッチン広い…綺麗…!)


自分のアパートと比べながら、流し台に買ってきた物を置いて、冷蔵庫を開けた。


「失礼します…」


冷蔵庫に飲み物とエクレアを入れると、パタンと扉を閉める。


(…普通に来ちゃったけど…)

「桜子」

(男の子の家、初めて…いやいや!変な意味じゃない…!幼馴染だし…)

「桜子?」

(それよりも映画…う!?)


振り返った桜子は、先ほどまでなかった壁にぶつかった。
慌てて顔を押さえながら見上げると、智也がじっと見ていた。


「ご、ごめんね…っ」

「いや、悪い。仕事の電話してた」


棚からコップを二つ取り出すと、冷凍庫から氷を入れて、冷蔵庫から買ってきた飲み物をとる。
二人分の飲み物が注がれる様子を見た桜子は、不思議そうな顔になった。


「智くんのバイトって何?」

「……バイト…ではないな。仕事だ」

「…?バイトも仕事じゃないの?」


飲み物が入ったコップを持ち、リビングへ向かった智也について、菓子袋が入ったレジ袋を持って桜子も歩く。
テーブルに桜子の分のコップを置くと、先ほど入っていった別室のドアを開けて、電気のスイッチを押した。

明るくなった部屋には、デスクと大型画面と複数モニターが置かれている。


「…エースっていう会社で管理システムと、学生向けの学習アプリを開発したり設計したりしてる。立ち上がって一年になる」

「エース…学生向け……って、少し前に話題になってたよね?なんだっけ…えーっと…」

「………」


思い出そうと考え込む桜子をチラリと見つつ、持っていた自分の分の飲み物を飲む智也。


「あ!思い出した!確か、高校生が起業したっていう、会…社……え?智くんそこで働いてるの…?」

「……」


智也は飲みながら、自分を指差した。