文化祭当日まで、あと十日ほどになった。
準備も少しずつ形になり始め、私は相変わらず拓翔と組んで作業することが多かった。
そして颯真は、私たちが一緒にいると、以前にも増して露骨に機嫌が悪くなるようになっていた。
作業に割って入り、私と拓翔の間に立つ。拓翔が私に飲み物を渡せば、不満そうな顔をする。
「あいつ、分かりやすすぎるんだよな」
作業が終わったあと、拓翔が呆れたように笑った。
私にも、もうわかっていた。
颯真は、私が拓翔といるのが嫌なのだ。
けれど、それが「好き」なのか、ただの独占欲なのかまでは、まだわからなかった。
帰り道、たまたま颯真と二人きりになるタイミングがあった。校門を出たところで、颯真が思い出したように言った。
「拓翔と二人になるの、やめて」
唐突な要求だった。私は思わず足を止めて、彼の顔を見た。
「なんで?」
「嫌だから」
「なんで嫌なの?」
私は畳み掛けるように尋ねた。ここではっきりとした理由を聞きたかった。もし彼が「好きだから」と答えてくれるなら、この曖昧な状況にも、少しは意味が見出せる気がした。
けれど、颯真は答えなかった。
口を開きかけては、また閉じる。何かを言おうとして、言葉が見つからないような、そんな様子だった。
その沈黙が、私にとっては何よりも雄弁な答えだった。
――結局、はっきりしたことは何も言えない。
失望と、それから静かな苛立ちが、胸の奥から込み上げてきた。
「一ノ瀬くんは、いつもそう。近づいてくるくせに、肝心なことは何も言わない。嫌だとは言うのに、なんで嫌なのかは教えてくれない」
颯真は何も言えないまま、ただ困ったような顔で私を見ていた。
「そういう中途半端なの、一番ずるいよ」
私はそのまま一人で歩き出した。
追いかけてくる足音は、最後まで聞こえなかった。
準備も少しずつ形になり始め、私は相変わらず拓翔と組んで作業することが多かった。
そして颯真は、私たちが一緒にいると、以前にも増して露骨に機嫌が悪くなるようになっていた。
作業に割って入り、私と拓翔の間に立つ。拓翔が私に飲み物を渡せば、不満そうな顔をする。
「あいつ、分かりやすすぎるんだよな」
作業が終わったあと、拓翔が呆れたように笑った。
私にも、もうわかっていた。
颯真は、私が拓翔といるのが嫌なのだ。
けれど、それが「好き」なのか、ただの独占欲なのかまでは、まだわからなかった。
帰り道、たまたま颯真と二人きりになるタイミングがあった。校門を出たところで、颯真が思い出したように言った。
「拓翔と二人になるの、やめて」
唐突な要求だった。私は思わず足を止めて、彼の顔を見た。
「なんで?」
「嫌だから」
「なんで嫌なの?」
私は畳み掛けるように尋ねた。ここではっきりとした理由を聞きたかった。もし彼が「好きだから」と答えてくれるなら、この曖昧な状況にも、少しは意味が見出せる気がした。
けれど、颯真は答えなかった。
口を開きかけては、また閉じる。何かを言おうとして、言葉が見つからないような、そんな様子だった。
その沈黙が、私にとっては何よりも雄弁な答えだった。
――結局、はっきりしたことは何も言えない。
失望と、それから静かな苛立ちが、胸の奥から込み上げてきた。
「一ノ瀬くんは、いつもそう。近づいてくるくせに、肝心なことは何も言わない。嫌だとは言うのに、なんで嫌なのかは教えてくれない」
颯真は何も言えないまま、ただ困ったような顔で私を見ていた。
「そういう中途半端なの、一番ずるいよ」
私はそのまま一人で歩き出した。
追いかけてくる足音は、最後まで聞こえなかった。



