普通の貴族だと思って結婚したら、身分を隠して潜伏する王太子様でしたー!? ……離婚します!

 彼は苛烈だと知られる父王とは違い人当たりの良い人で、夫婦としての必要な相談や雑談などで嫌な思いをすることはなかった。

 真正面からなかなか目を合わせられない私は、綺麗な横顔を見るたびに、アルベルトが身分を隠した王子様でなかったら……なんて、思うことがあった。

 とはいえ、私はもう面倒な身分は懲り懲りで、普通の貴族としての生活を強く望んでいた。

 アルベルトが王位を継ぐにしても、いまの政治基盤は安定しているとは言いがたい。

 ……私は彼とともに、その苦難を乗り越える覚悟が持てるのか? と言われたら、決してそうではなかった。

 アルベルトにはもっと合う女性が、どこかにいるだろうと思う。私にも、もっと合う男性がいるように。

 だから、私はアルベルトと白い結婚を続け、二年後に何事もなかったように離婚したい。それが私の希望だったし、そうなるように全ての流れは進んでいた。

 何の不満もない……ただの、肉体関係のない穏やかな結婚生活だった。

「……旦那様はどこにいるかしら?」

 私はアルベルトを探していた。領地の契約の件で、彼の署名が必要だったのだ。