「ティア。……様子がおかしいが、俺は何かしたのか?」
リビングのテーブルでお茶を淹れていたエヴァンが、じっとネネティアを見すえた。
その涼やかな顔立ちは、相変わらずすきがない。いつもの、知的で落ち着いた「保護者」の顔だ。
だが、その仮面の下がどうなっているかを、ネネティアはもう知ってしまっている。
――うわあああ、その顔!
精神リンクで見た、エヴァンの気持ち。
平然とした顔をしてエヴァンが押し殺してきたその気持ちは、あのとき、すべてネネティアの中に流れ込んでいた。
――すました顔して「今日も声も話し方も愛らしい。今の高低差のつけ方が……」とか、真剣に分析してたんでしょう!?
予想以上、いや、まったく予想外だった。
あまりにも大きすぎる思いを一度に受け取ってしまったネネティアは、それをどう受け止めればいいかまったくわからなかった。
「エ、エヴ様は!ちょっと、ううん、ものすごおく!ポーカーフェイスがうますぎるんですっ!!私、全然わからなかった!!」
「……?どういう意味だ……、ティア?」
脳裏によみがえる精神リンクの記憶。淡々とした日常の裏で、エヴァンの理性がどれほど回転し、どれほど深い独占欲と愛情の間で揺れていたか。それを思い出すごとに、ネネティアの全身の水分がすべて沸騰しそうになる。
「私はいつだって、師匠の弟子ですっ!」
完全に泳ぎ切っている視線を必死で天井に向けながら、ネネティアはじりじりと後ずさった。
「……?」
エヴァンは不思議そうな顔をして、ゆっくりとカップを持ち上げ紅茶を一口すすった。
「――!」
その仕草すら、「今のは動揺を隠すための計算された優雅な動作だ!」と変換されてしまう。
「あーもうっ!無理です!無理無理無理無理!」
耐え切れなくなったネネティアは、両手で自分の真っ赤な頬を押さえると、そのまま床にへなへなとしゃがみ込んでしまった。
「ティア?」
「エヴ様が!エヴ様の考えてることが大きすぎるんです! そんなに涼しい顔して、いつも私のことばっかり考えて……! そんな、そんなでっかい想い育ててたなんて聞いてないです!」
膝を抱えてうずくまるネネティアの背中に、エヴァンの動きがピタリと止まった。
どんな難解な魔法陣を目の前にしても動じないその手が、わずかにカップを揺らす。
「……そういうことか」
低く、どこか観念したような声が落ちる。エヴァンの頬も、照れたように赤く染まっている。
エヴァンはゆっくりと椅子から立ち上がると、ネネティアの目の前まで歩み寄り、片膝をついて彼女と同じ目線に合わせた。
「今さらごまかすつもりもないが……」
「……私だって、全然気づかないフリしてたいんですけどっ!」
頬を膨らませて顔を背けるネネティアは、耳たぶまで見事に真っ赤だ。
エヴァンは、その様子をしばらく見つめた。
「そうか。……ネネティア?これからは少しずつ、隠さずに伝えるつもりだよ」
心臓が大きく跳ね上がって、ネネティアはあわててエヴァンを見上げる。
エヴァンは見たこともないほど柔らかく、力の抜けた笑みをこぼした。
「どうやらティアも、口説かれる気持ちがわかるようになったようだね」
エヴァンの瞳にはもう余計な隠し事はなく、ただ純粋な温かさと、まっすぐな熱だけが宿っていた。
差し出された温かい手。
赤くなった顔を片手で隠しながらも、ネネティアは震える指先でその手を取った。
リビングのテーブルでお茶を淹れていたエヴァンが、じっとネネティアを見すえた。
その涼やかな顔立ちは、相変わらずすきがない。いつもの、知的で落ち着いた「保護者」の顔だ。
だが、その仮面の下がどうなっているかを、ネネティアはもう知ってしまっている。
――うわあああ、その顔!
精神リンクで見た、エヴァンの気持ち。
平然とした顔をしてエヴァンが押し殺してきたその気持ちは、あのとき、すべてネネティアの中に流れ込んでいた。
――すました顔して「今日も声も話し方も愛らしい。今の高低差のつけ方が……」とか、真剣に分析してたんでしょう!?
予想以上、いや、まったく予想外だった。
あまりにも大きすぎる思いを一度に受け取ってしまったネネティアは、それをどう受け止めればいいかまったくわからなかった。
「エ、エヴ様は!ちょっと、ううん、ものすごおく!ポーカーフェイスがうますぎるんですっ!!私、全然わからなかった!!」
「……?どういう意味だ……、ティア?」
脳裏によみがえる精神リンクの記憶。淡々とした日常の裏で、エヴァンの理性がどれほど回転し、どれほど深い独占欲と愛情の間で揺れていたか。それを思い出すごとに、ネネティアの全身の水分がすべて沸騰しそうになる。
「私はいつだって、師匠の弟子ですっ!」
完全に泳ぎ切っている視線を必死で天井に向けながら、ネネティアはじりじりと後ずさった。
「……?」
エヴァンは不思議そうな顔をして、ゆっくりとカップを持ち上げ紅茶を一口すすった。
「――!」
その仕草すら、「今のは動揺を隠すための計算された優雅な動作だ!」と変換されてしまう。
「あーもうっ!無理です!無理無理無理無理!」
耐え切れなくなったネネティアは、両手で自分の真っ赤な頬を押さえると、そのまま床にへなへなとしゃがみ込んでしまった。
「ティア?」
「エヴ様が!エヴ様の考えてることが大きすぎるんです! そんなに涼しい顔して、いつも私のことばっかり考えて……! そんな、そんなでっかい想い育ててたなんて聞いてないです!」
膝を抱えてうずくまるネネティアの背中に、エヴァンの動きがピタリと止まった。
どんな難解な魔法陣を目の前にしても動じないその手が、わずかにカップを揺らす。
「……そういうことか」
低く、どこか観念したような声が落ちる。エヴァンの頬も、照れたように赤く染まっている。
エヴァンはゆっくりと椅子から立ち上がると、ネネティアの目の前まで歩み寄り、片膝をついて彼女と同じ目線に合わせた。
「今さらごまかすつもりもないが……」
「……私だって、全然気づかないフリしてたいんですけどっ!」
頬を膨らませて顔を背けるネネティアは、耳たぶまで見事に真っ赤だ。
エヴァンは、その様子をしばらく見つめた。
「そうか。……ネネティア?これからは少しずつ、隠さずに伝えるつもりだよ」
心臓が大きく跳ね上がって、ネネティアはあわててエヴァンを見上げる。
エヴァンは見たこともないほど柔らかく、力の抜けた笑みをこぼした。
「どうやらティアも、口説かれる気持ちがわかるようになったようだね」
エヴァンの瞳にはもう余計な隠し事はなく、ただ純粋な温かさと、まっすぐな熱だけが宿っていた。
差し出された温かい手。
赤くなった顔を片手で隠しながらも、ネネティアは震える指先でその手を取った。

