私が息をする今日に奇跡の気配がした

 私の死を告げる不審者が現れる翌日、私はいつも通りの朝を迎えた。
 昨日、急に体調が悪くなるなんてこともなく、普通に元気だ。
 ー今日は早めに行かないとな・・・。
 学校に行くには、あの道を通る必要がある。だけど、昨日あんなことがあったのだ。正直、あの道を通るのは嫌だ・・・。
 だから、今日は別のルートで学校に行きたい。その別ルートは普段よりと遠回りだから、早く家を出る必要があるのだ。
 靴を履いて、重い教科書が入った鞄を持ち上げる。
 「いってきまーす」
 なんてことのない、いつも通りの朝。これが私の3ヶ月の始まりだった・・・。

 「おはよう、歩美」
 「おはよう」
 またあの不審者と遭遇するなんてこともなく、私は無事に学校に来ることが出来た。
 教室に入ると、もう半数以上の生徒が登校していた。
 いつもより早く家を出たのに、着くのがいつもより遅いなんて・・・。
 「そういえば、知ってる?」
 「どうしたの?」
 席に着くと、少し興奮気味の隣の席の(さち)が話しかけてくる。
 「転校生が来るらしいよ!しかも、超美形の!」
 「・・・そうなんだ」
 超美形・・・。その言葉を聞いて、私の頭の中に浮かんだのはあの不審者だった。
 彼も、超美形。そう言えるくらいの綺麗な顔をしていた。まさか、転校してくるなんてことはないだろうけど、少しだけ怖くなってしまった。
 「うちのクラスに来たらいいなぁ~」 
 そんな私の気も知らず、幸は話を続けている。
 「それでさ、仲良くなったりして・・・。まぁ、同じ学年とは限らないけどね~」
 「頑張って・・・」
 仮に転校してきたとして、うちの学校はクラスの数は多いから同じクラスになるのは難しいと思う。それに、彼は大人びた顔立ちをしていたから、年上だろう・・・。
 不審者と、同じ学校ってのは怖いけどね・・・。
 まぁ、可能性はゼロに近いだろう。
 「お前らー、席に着けー」
 教室のドアが開いて、担任の佐藤先生が入ってきた。
 時計に目をやると、もうホームルームの時間だった。
 「転校生来るかな・・・」
 幸が、先生にばれない程度に体を私の方に寄せて聞いてくる。
 幸の他にも転校生が来るという情報を入手したのであろうクラスメイトが、こそこそ話している。
 「どうかな。でも、来ると良いね」
  かなりの数のクラスメイトが話しているから、教室内は少しザワザワしていたけど、先生はそれを注意する様子もなく口を開いた。
 「みんなに嬉しい知らせだ。今日からこのクラスに新しい仲間が加わることになった」
 「やった・・・!」
 幸がガッツポーズをした。
 他のクラスメイトも、興奮気味に周りの子とおしゃべりをし始める。
 「みんな、一旦落ち着け。衛守、入ってこい」
 今度は注意した先生が、転校生がいるであろう廊下に呼びかけた。
 「はじめまして、衛守連です」
 入ってきた転校生を見て、一度は静かになった教室が再び生徒の話し声で満ちた。
 私は、入ってきた転校生を見て黙ってしまった。