観覧車の前は空いていた。
ベンチからは、遊園地の派手な色の沢山のアトラクションと、遠くにあるアイス屋が小さく見えた。
「観覧車は雰囲気あんね」
翔が背中を振り返って言った。
「最後にあれ乗ろうや。中から見るとええ景色やで。」
それから、
「恋、キスしてって僕に言ってや。」
と甘え声で機嫌良く言った。
「このベンチも雰囲気あんで。多分カップルのワンシーンのためやんな。」
「悪いけど……」
言い出した恋の額に、ふと何かが当たって上を見上げると、白い空からぽつ、ぽつ、と雨が降り出している。
「宗介と、あと樋山くんとかも居るけど、そのう、二又でなら……」
恋がそう言うと、翔はきっぱりと、
「ないで。それは。」
と言った。
「あんたはワイと宗介でワイや。狐の子に、選択権なんかないで。」
それから写真に映る時の子犬の様な笑顔を作って、
「僕って言いや。」
と言った。
「悪いけど……」
恋が申し訳なさそうに言った。
「二又で駄目なら、宗介なんだ……」
翔がふっと表情をなくした。
「あんた、宗介好きやんな?」
「ごめん……」
「ワイは?ワイとどっちや?」
「ごめんね……」
恋が言い淀むと、翔は冷たい声で、
「あっそ」
と言った。
「僕二又嫌や。僕ばっかり好きなのつまらんきに。ワイのもんにならんならええ。宗介か……」
それから思いっきり皮肉に笑うと、立ち上がった。
「ええで。あんたがええなら。それでもな。……後悔すんで!」
雨足が強くなってきたので、恋達は屋根の下へと移動した。



