日曜日。
恋が宗介の家に行くと、五分袖のゆるい紺のシャツに紺のズボンを履いて、いつもよりお洒落な格好をした宗介が、母親と話していた。
「服装なんかどうでも良い。樋山みたいにキメキメにキメないで、多少ださい方が男は格が上なんだ。」
宗介が言った。
「色位合わせなさいよ。お洒落に興味がない場合、女の子も男の子も袖丈を考える。ゆるい五分袖は簡単に垢抜けて見えるわよ。」
「くだらな。お洒落なんかしてる暇があったら、英単語の1個でも覚えた方が良い。モデルの向井とぼんの樋山がお洒落過ぎるんだ。女子かっつーの。そのうち化粧でも始めるんじゃね?」
「男の子もお洒落しなきゃだめよ。可愛いベストとか、シャツとか一杯買ってあげてるのに、なんでいつもおんなじのしか着ないのよ」
「着心地で楽なのがあるんだ。楽だったら洒落てても良いけど。ああ、面倒。恋、男はあんま洒落ないべきだと思うよな?」
恋が困った顔をしていると、宗介はいつも使っている斜め掛けの鞄を取って、支度をはじめた。
最後にお茶を一杯飲むと、恋と宗介は玄関を出て、歩き出した。
駅前の日時計の待ち合わせ場所では美風と理央と律が待っていた。
「白王子、白王子、こっち向いてください」
「嫌だ。僕にカメラを向けるな。死ね」
日時計のベンチでは、スマホを持った律が、カメラを美風に向けて大層嫌がられていた。
「白王子の樋山さん、沢山撮ってきてくださいね、って、事務所の人に言われてるんですよ」
「死ね。写真を撮られるのは大嫌いだって言ってる。ふざけてないでカメラ消せよ。」
「それだけの容姿で、モデルやんないなんて気狂いだ。あやかし狐並みのルックスの癖に。スカウトしてきてくれって頼まれてますよ。それに、樋山さんのオフショ撮ってきたら加納さんにお小遣いあげるって言われてるんです」
「ねえ、あやかし狐って何?。律ちゃん」
「こっちの話です。うわっ」
美風は律から無理矢理スマホを奪うと、カメラ画面を切って律に返した。
「あーあー勝手に触らないでくださいよ」
「僕にカメラを向けるな。まったく腹立つな。」
「頑固ですねえ。良いですよーじゃあ。駒井さん一緒に撮りましょう」
「良いねえ。今日メイクバッチリだから!」
ぶつぶつ言っている美風を隣に、ノリノリの律と理央は2人で自撮りを始めた。
恋と宗介が着いた時は、理央と律が2人で嫌がる美風にスマホのカメラを向けている所だった。
「あ、恋!」
理央が気づいて声を掛けた。
「樋山くん撮ってくるとお小遣い出るんだって。恋も撮ろうよ」
「最低。駒井は味方だと思ってたのに。辞めてったら」
「ざまあみな。」
宗介が鼻で笑った。
と、律がその宗介をパシャリと撮った。
「なんだよ」
「小遣い出るの、黒王子もですよ」
「えっそうなの?。上野くん撮らせてよ」
「最低。僕を撮るな。写真返せ。」
「嫌です。売るんですもん」
「そっちがざまみな。もう、新田さんどうにかしてよ。」
恋達は駅へ向かった。



