戦闘狂の新妻

 数分後、リリーが着替えを終えると、侍女が悲鳴にも似た声を上げた。


「奥様がそのようなお召し物を……」

「いいのよ。土いじりをするのに、ドレスなんて着ていられませんわ」


 ブルグマンシア家から連れてきた侍女だけは、慣れた様子で淡々とリリーの髪を結い上げている。


「で、ですがせめて旦那様とのお食事の際だけでも!」

「何度も着替えるなんて効率が悪いわ。ペンバートンは資材が豊富な土地ではないのだから、石鹸も水も、それに手間も無駄遣いなんてできません」

「どうしたのだ。廊下まで声が漏れていたが……」


 リリーが侍女の訴えを突っぱねていると、オーガストが顔を出した。黒いズボンに黒いシャツを身につけたリリーは、ドレスを抱えて半泣きになっている侍女から視線を逸らし、オーガストを見上げた。


「旦那様、レディの着替えの場にノックもなしに入るのは失礼ですわ」

「す、すまない。その格好は?」

「作業着です」

「作業着?」


 オーガストは面食らい、おうむ返しに同じ言葉を繰り返すことしかできなかった。


「……それは、昨日言っていた『松』とやらを植えるのに必要な衣装なんだな?」

「そうです」

「ふむ。なら仕方あるまい。王命だというしな」


 オーガストは後半を侍女に向けて言った。


「ただし、夕飯の際はドレスに着替えてくれ。家臣たちへの披露もあるし、侍女たちは久しぶりの女主人に着飾らせるのを楽しみにしていたんだ」


 そう言われて、リリーはようやく周囲の侍女たちを見回した。


「そうですか……仕方ありませんね。夕飯だけですよ?」


 リリーはまだ少し不満だったが、オーガストが侍女たちへ向かって頷くと、ようやく二人は朝食へと向かった。