戦闘狂の新妻

 その日の夜。案内された寝室でリリーが横になろうとすると、寝間着姿のオーガストが入ってきた。


「申し訳なのだが、寝室を共にさせてほしい。申し訳ないのだが」

「二回言わなくても。一応傍から見たら夫婦なのですから当然では? 一応」

「そ、そちらも二回言わなくていいだろう。触れないようにするので」

「触れてもらっていいですけど」


 リリーが不満げに眉をひそめると、オーガストは困ったように目を逸らした。

 生娘かと言ってやりたくなったが、リリーはぐっと飲み込んだ。


「旦那様、生娘じゃないんですから、さっさと寝てください。明日もやることがたくさんあるんですよ」


 結局言ってしまった。オーガストがますます困った顔でリリーを見てから、ベッドに横になった。


「旦那様、そんな隅っこに寝てたら落ちますよ。私、寝相悪いんですから」

「……蹴り落してくれてかまわんよ」

「さすがにドラクル辺境伯を初日に蹴り落とすのは、ちょっと良心が痛みます。もう少しこちらに来てくださいな」


 リリーが掛け布団をめくり、ベッドの真ん中あたりをぽんぽんと叩くと、オーガストが渋々移動してきた。


「おやすみなさいませ、旦那様」

「……おやすみ、リリー」


 しかし、ほどなくしてベッドの脇でどすんと物音がし、オーガストはすぐに飛び起きた。


「曲者か!? いや、これは……」


 オーガストがベッドの下を覗くと、リリーが丸まって寝ていた。

 布団にくるまったままベッドから転げ落ち、そのまま気持ちよさそうに寝ている。


「たしかに、寝相が悪いな」


 オーガストは布団ごとリリーを抱え上げてベッドへ寝かせ直した。しかし、その後も三度転げ落ちたため、ついにあきらめて抱きかかえたまま眠った。

***

 翌朝、リリーは布団にくるまれたまま、オーガストの腕の中に収まっていた。


「あの、旦那様?」

「……おはよう、リリー。あれだけ転げ落ちたのに、目を覚まさないのはどういうわけなんだ」


 あくびをするオーガストに、リリーは顔をしかめた。


「申し訳ございません」

「かまわん。かまわんが、今後は抱えて寝る。何度も起こされてはかなわない」


 リリーはきょとんとしてから、苦笑する。そのまま布団から這い出ると、ほどなくして侍女が湯を持ってやってきた。

 オーガストはあくびをしながら出て行った。