「おはようございます、お父様」
「……うん。おはよう、リリー」
リリーが食堂に顔を出すと、この一年で半分ほどにやせ細った父、ヘムロック・ブルグマンシア伯爵が、疲れ切った顔を娘へ向けた。
父の前の皿はほとんどなにも乗っていない。それも、この一年ほどの話だ。
「ついにお母様が出ていったの?」
「ああ。なんだ、お前わかっていたのか」
「逆になんでわからないと思ったのかしら」
リリーの母親であるブライア・ブルグマンシア夫人が、夫のヘムロックに愛想をつかし、浮気に明け暮れていることは、社交界では格好の噂の種だった。
その噂はリリーの耳にもしっかり届いていた。そのせいでリリーまで男好きだと思われ、若い貴族たちからしつこく声をかけられることも多く、心底うんざりしていた。
「それで、だ」
ヘムロックがパシッと手を叩いた。
「今更ではあるが、これ以上我が家の醜聞が広まるとリリーの将来に差し障る。お前ももう十八になるし、今来ている縁談の中から王都から最も遠い地へ嫁いでおいで」
「今更にもほどがあると思いますが……どなたですか?」
「ドラクル辺境伯だ」
「お父様の人を見る目のなさにはびっくりしますわ」
笑いながらパンを頬張るリリーに、控えていた執事が見合いの釣書を差し出した。
「……うん。おはよう、リリー」
リリーが食堂に顔を出すと、この一年で半分ほどにやせ細った父、ヘムロック・ブルグマンシア伯爵が、疲れ切った顔を娘へ向けた。
父の前の皿はほとんどなにも乗っていない。それも、この一年ほどの話だ。
「ついにお母様が出ていったの?」
「ああ。なんだ、お前わかっていたのか」
「逆になんでわからないと思ったのかしら」
リリーの母親であるブライア・ブルグマンシア夫人が、夫のヘムロックに愛想をつかし、浮気に明け暮れていることは、社交界では格好の噂の種だった。
その噂はリリーの耳にもしっかり届いていた。そのせいでリリーまで男好きだと思われ、若い貴族たちからしつこく声をかけられることも多く、心底うんざりしていた。
「それで、だ」
ヘムロックがパシッと手を叩いた。
「今更ではあるが、これ以上我が家の醜聞が広まるとリリーの将来に差し障る。お前ももう十八になるし、今来ている縁談の中から王都から最も遠い地へ嫁いでおいで」
「今更にもほどがあると思いますが……どなたですか?」
「ドラクル辺境伯だ」
「お父様の人を見る目のなさにはびっくりしますわ」
笑いながらパンを頬張るリリーに、控えていた執事が見合いの釣書を差し出した。



