戦闘狂の新妻

 また別の日の朝、リリーは都市の防御壁に沿ってハーブの苗を植えていた。
 周囲の見回りをしていた兵士がリリーの手元を覗き込む。


「奥方、今度は何を植えておいでです?」

「シーフェンネルです」

「美味いですか? 少し前は肥料を作っておいででしたけど」

「肥料は有事の際のお披露目にするとして、このハーブはこれから美味しくする予定です」

「食い物なんですね。楽しみです」


 兵士たちは笑顔で見回りに戻っていく。

***

 数週間後、リリーは収穫したシーフェンネルを籠いっぱいに抱え、城の厨房を訪れた。


「お、奥方!? なぜこのような場所に?」


 厨房長がばたばたと飛び出してきた。


「保存食についてご相談にまいりました」


 リリーはシーフェンネルを見せた。


「こちらのハーブと塩で魚や肉を漬け込むと、長期保存が可能になりますの。ですから何か試しに作らせていただこうかと……あ、効果はブルグマンシア伯爵領ですでに確認済みです。ですが、皆さまはご自身の手で確かめたいと思われるでしょうから、こうしてお願いに参りました」

「なるほど」


 厨房長はハーブをひとつまみ手に取り、鼻先へ寄せた。


「ふむ、変わった香りですな。なるほど……。奥方のご実家ではどういった保存食をお作りで?」

「ブルグマンシア伯爵領では……」


 伯爵夫人と厨房長は、いつの間にか厨房の入り口で熱心な立ち話を始めていた。

 料理人たちと侍女たちは、慌てて厨房の椅子を運び、二人へ勧めた。