その頃、王宮の一室でお気に入りの薔薇の紅茶を入れ、国王とローガンと共に過ごしていた王妃はにこにこと楽しそうに口を開いた。
「ローガンが決意してくれてよかったわ」
そんな喜ぶ王妃も恐らくは第一王子のことをローガン同様に思い、この提案をしてきたのだろうと予想しながらローガンは頷いた。
「ええ。彼女ならぴったりです。まぁ、ですが、彼女が成長し私との婚約が嫌だと思った時には手放してあげるつもりですよ。母上もそれは分かって下さい」
「え?」
王妃が驚いたように声を出すと、ローガンは畳み掛けるように言った。
「兄上の件があるから了承しましたが、彼女の意思も尊重してあげたいのです」
首を傾げる王妃の様子に、母は本当に娘が欲しかったからという理由だけだったのだろうかとローガンはため息をつき、国王の方へと向き直る。
「父上、以前も伝えていますが、私はこれからも兄上を支えていくつもりです。ですから聖女を必ず見つけ出し、兄上を元気に戻してみせます」
ローガンの言葉に国王は深く頷きつつも、かつて歴代最強と呼ばれた聖女の事を想いだし目を細める。
聖女はまるで精霊のように美しい人だった。
俗世から隔離された場所で大切に育てられ、その力故に自由などなかった哀れな人。
力さえなければ、傾国の美女となったであろう。
ある意味では聖女だからこそ争いの火種となることなくこの国で守れた。
聖女という立場の盾がなければ、あの時、様々な国から狙われていたであろう。いや、狙われたからこそあの結末を迎えたわけだが。
国王はもしも歴代最強と言われた聖女と同等の力をもった娘を見つけた場合、どうするべきか思案する。
眼前にいる息子は、兄を救う事にしか目が向いていない。
聖女と分かった娘がどうなるかなどとは考えていないのだろう。
「父上。では、私は兄上の見舞いに行ってきます。失礼します」
「あぁ。私も後程向かうと伝えておいてくれ」
「分かりました」
部屋から出て行ったローガンから視線を外し息をつくと、横にいる王妃が困ったような表情を浮かべている事に国王は気づいた。
「どうした?」
王妃は頬に手を当てて、ため息をついた。
「きっとあの子、ちゃんと釣書を見ていないのだわ」
「ん? どういう意味だ? 念のためにコレット嬢について調べた資料などは目を通しているはずだが」
国王もコレットの釣書や側近に調べさせた資料などにも目を通したが問題はなかったはずだ。
何より、王妃がコレットを気に入っているということだったが。
何が問題なのかと首を傾げると、王妃は机に置いていた釣書を手に取り、それを開くと、一か所を指差した。
「私はコレットと話をして聞いていたから、最初は驚いたけれど知っていたの。小っちゃくて可愛いから、私は気にしてないけど。でもあの子、気づいていない気がするの」
「ん? これは……この外見で……ふーむ。うん。気づいていないな」
国王は困ったように王妃と顔を見合わせた。
王妃が指差したのは、年齢の所。十六歳。
ローガンと同じ年齢である。
「まぁいつか気づくだろう」
国王の言葉に、王妃も頷いた。
「そうね。それでローガンが婚約をやめるとか言っても嫌ですし」
「うーん。まぁ、しばらく様子を見ようか」
そんな会話をしているなど、ローガンは知らない。
いつになったら気付くのか、王妃と国王は少しばかりぬけのある息子にため息をついた。
「ローガンが決意してくれてよかったわ」
そんな喜ぶ王妃も恐らくは第一王子のことをローガン同様に思い、この提案をしてきたのだろうと予想しながらローガンは頷いた。
「ええ。彼女ならぴったりです。まぁ、ですが、彼女が成長し私との婚約が嫌だと思った時には手放してあげるつもりですよ。母上もそれは分かって下さい」
「え?」
王妃が驚いたように声を出すと、ローガンは畳み掛けるように言った。
「兄上の件があるから了承しましたが、彼女の意思も尊重してあげたいのです」
首を傾げる王妃の様子に、母は本当に娘が欲しかったからという理由だけだったのだろうかとローガンはため息をつき、国王の方へと向き直る。
「父上、以前も伝えていますが、私はこれからも兄上を支えていくつもりです。ですから聖女を必ず見つけ出し、兄上を元気に戻してみせます」
ローガンの言葉に国王は深く頷きつつも、かつて歴代最強と呼ばれた聖女の事を想いだし目を細める。
聖女はまるで精霊のように美しい人だった。
俗世から隔離された場所で大切に育てられ、その力故に自由などなかった哀れな人。
力さえなければ、傾国の美女となったであろう。
ある意味では聖女だからこそ争いの火種となることなくこの国で守れた。
聖女という立場の盾がなければ、あの時、様々な国から狙われていたであろう。いや、狙われたからこそあの結末を迎えたわけだが。
国王はもしも歴代最強と言われた聖女と同等の力をもった娘を見つけた場合、どうするべきか思案する。
眼前にいる息子は、兄を救う事にしか目が向いていない。
聖女と分かった娘がどうなるかなどとは考えていないのだろう。
「父上。では、私は兄上の見舞いに行ってきます。失礼します」
「あぁ。私も後程向かうと伝えておいてくれ」
「分かりました」
部屋から出て行ったローガンから視線を外し息をつくと、横にいる王妃が困ったような表情を浮かべている事に国王は気づいた。
「どうした?」
王妃は頬に手を当てて、ため息をついた。
「きっとあの子、ちゃんと釣書を見ていないのだわ」
「ん? どういう意味だ? 念のためにコレット嬢について調べた資料などは目を通しているはずだが」
国王もコレットの釣書や側近に調べさせた資料などにも目を通したが問題はなかったはずだ。
何より、王妃がコレットを気に入っているということだったが。
何が問題なのかと首を傾げると、王妃は机に置いていた釣書を手に取り、それを開くと、一か所を指差した。
「私はコレットと話をして聞いていたから、最初は驚いたけれど知っていたの。小っちゃくて可愛いから、私は気にしてないけど。でもあの子、気づいていない気がするの」
「ん? これは……この外見で……ふーむ。うん。気づいていないな」
国王は困ったように王妃と顔を見合わせた。
王妃が指差したのは、年齢の所。十六歳。
ローガンと同じ年齢である。
「まぁいつか気づくだろう」
国王の言葉に、王妃も頷いた。
「そうね。それでローガンが婚約をやめるとか言っても嫌ですし」
「うーん。まぁ、しばらく様子を見ようか」
そんな会話をしているなど、ローガンは知らない。
いつになったら気付くのか、王妃と国王は少しばかりぬけのある息子にため息をついた。
