君のとなり〜拓実と〜

 春休み。

中学時代の同級生たちが集まる、小さな同窓会が開かれた。

久しぶりに会うメンバーが集まる中、瑠夏もその輪の中にいた。

そして――翔も来ていた。

中学を卒業してから、もう一年。

「瑠夏には関係ない」

そう言われてから、ずっと翔とは話していなかった。

同じ場所にいても、自然と距離ができてしまう。

今日も、必要以上に翔を見ないようにしていた。

そんな中、友達が昔の話を始めた。

「ねえ、そういえばさ」

「彩花と翔って付き合ってるって噂、あったよね。あれって本当はどうだったの?」

その言葉に、彩花と翔が同時に顔を上げた。

「は?」

二人の反応が重なって、周りから笑いが起こる。

「いやいや、付き合ってないから!」

彩花が慌てて手を振る。

「告ったのは本当だよ。でも振られたんだよね〜」

「……彩花、それ今言う?」

翔が苦笑する。

「だって本当のことじゃん」

彩花は笑いながら肩をすくめた。

「振っても翔は変わらず仲良くしてくれたけどさ」

「まあ、普通に友達だし」

翔は何でもないことのように答える。

その会話を、瑠夏は黙って聞いていた。

胸の奥が、ざわざわする。

付き合ってなかった……?

あの噂は、嘘だったの?

すると彩花が、ふと思い出したように言った。

「そういえば、この前、瑠夏と偶然会ったんだよね」

瑠夏が顔を上げる。

「そのとき話してたらさ……瑠夏もあの噂、信じてるみたいだった」

「……え?」

翔の声が落ちた。

彩花は、何も気にせず続ける。

「私と翔が付き合ってたって、今でも思ってるみたいだったよ」

その瞬間。

翔の中で、何かが繋がった。

中学の頃。

急に瑠夏が自分を避けるようになったこと。

話しかけても、どこかよそよそしかったこと。

もしかして。

瑠夏はずっと――。

俺と彩花が付き合っていると思っていた?

そう思った瞬間、胸の奥が苦しくなった。

もし、あの噂がなかったら。

もし、瑠夏があの噂を信じていなかったら。

あの頃、俺たちはもっと普通に話せていたんだろうか。

もっと近くにいられたんだろうか。

もしかしたら――。

俺と瑠夏の関係は、何か違うものになっていたんじゃないだろうか。

翔は、ゆっくり瑠夏を見る。

瑠夏は俯いたままだった。

その横顔を見つめながら、翔は初めて知った。

あの頃、瑠夏が自分を避けていた理由を。