『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

母さんが片手を上げる。

「じゃあ呼ぶわね」

「逃げられないようにしろよ」

「弟の居場所くらい分かるわよ」

 ぱちん、と指を鳴らした瞬間、空間が黒く歪み、その中心から一人の男が現れた。

 長身で、がっしりとした骨格と鍛えられた身体。甘い顔立ちではないが、黙って立っているだけで目を引く、いかにも男らしい風貌をしている。

 死神部門長・窓路。

 俺の幼馴染。

 友人。

 そして叔父。

 改めて考えると、本当にややこしい。

 窓路は転移した直後、母さん、親父、神楽、千景、灯里、朔と順に周囲を見回し、最後に俺へ視線を止めた。

 数秒の沈黙のあと、窓路が先に口を開く。

「よう」

「よう、じゃねぇよ」

「元気そうだな」

「誰のせいで疲れてると思ってんだ」

「色々」

「その色々の半分くらいお前だろ!」

 窓路は少しだけ肩を竦めた。

 相変わらず腹が立つ。

 頭が良すぎるくせに、必要なことほど説明せず、自分の中で筋が通っていれば相手もそのうち分かると思っているところは、昔から変わらない。

「窓路」

「何だ」

「一個ずつ説明しろ」

「何を」

「全部だよ!」

 俺は指を折りながら並べる。

「死神部門のボイコット。俺の手当書類。昨日のメッセージ。神楽のことを何処まで知ってたのか。それから――木魂おじさんが何やらかしたのか。以上!」

 窓路は俺の手を見ながら、少し黙った。

「多いな」

「誰のせいだ!」

 神楽から笑いが伝わってくる。

『窓路、ちゃんと説明した方がいいよ』

「神楽まで言うか」

『軍釟、そろそろ限界だから』

「分かってる」

「分かってんなら最初から話せ!」

 母さんは楽しそうに俺たちを眺めている。

「本当に昔から変わらないわねぇ」

「母さん、今は黙っててくれ」

 窓路がようやく息を吐いた。

「分かった。話す」

「本当に?」

「ああ」

「途中で『自分で考えろ』とか言うなよ」

「言わない」

「逃げんなよ」

「逃げない」

「誤魔化すなよ」

「しつこい」

「お前が信用ねぇんだよ!」

 その時だった。