『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

「……は?」

「軍釟一人では開かないわ」

「何で俺の家族が必要なんだ」

「血と縁よ。この扉は、力では開かないの」

「じゃあ何で開く」

「繋がり」

 その言葉だけが、妙に耳へ残った。

 言われるまま、俺が右側、千景が左側、灯里と朔がその下へ手を置き、四人同時に扉へ触れる。

 その瞬間、表面に刻まれていた紋様が一斉に光った。

 足元から凄まじい力が立ち昇ったものの、不思議と苦しさはない。それどころか俺一人の魔力ではなく、千景、灯里、朔、それぞれの気配が混ざり合いながら扉へ吸い込まれていくのが分かった。

 中央に刻まれていた鎖が一本ずつ消え、最後の一本が解けた瞬間、低い音を立てながら扉がゆっくり開き始める。

 その向こうは薄暗かった。

 けれど奥には、一つだけ淡い光が浮かんでいる。

 巨大な水晶にも見える透明な保護領域。

 その中心に、一人の男がいた。

 若い。

 俺とどこか似ている。

 でも、同じではない。

 穏やかな顔立ちで、閉じられた瞼のまま静かにそこへ存在しているだけなのに、何故か目を離すことができなかった。