『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

親父は答えなかった。

 その態度が余計に気に入らない。

 やがて母さんが、一枚の扉の前で立ち止まった。

 真っ白な壁へ埋め込まれた扉には、鍵穴も取っ手もない。表面には円、星、翼、鎖を組み合わせた見慣れない紋様が刻まれ、中央には二つの大きな手形と、その下に二つの小さな印が並んでいる。

「何だこれ」

「真実の扉よ」

「そのまんまの名前かよ」

「名前はどうでもいいでしょう」

「いや、もうちょっと何かあっただろ」

「軍釟」

 親父に睨まれ、珍しく本気で真面目な空気なのだと察した俺は、渋々口を閉じた。

「で、どうやって開ける」

「私でも開けられないの」

「親父でも?」

「俺も無理だ」

 思わず二人を見る。

 この夫婦が揃って開けられない扉など、滅多にない。

「じゃあ誰が開けるんだよ」

 母さんの視線が、俺から千景、灯里、朔へと移る。

「あなたたち四人」