『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

冥府では俺をただの門番だと思っている連中も多いが、天界へ来れば話は別だ。

 俺は天界統括女王・沙羅麻の息子であり、元天界人でありながら冥府へ下り、今では閻魔大王となった螺良の息子でもある。

 それだけで余計な視線を集めるし、本来俺がどれほどの力を持っているか知っている者までいるとなれば、なおさら居心地が悪かった。

「軍釟?」

 千景の声で我に返る。

「何?」

「また考え込んでる」

「考えてねぇよ」

「顔に出てる」

「放っとけ」

 そんなやり取りをしながら歩いていると、少し先に巨大な白亜の門が見えてきた。

 天界統括宮。

 母さんが普段いる場所だ。

 門の前には二人の天界兵が立っていたが、俺たちの姿を見るなり揃って深く頭を下げた。

「軍釟様、お待ちしておりました」

「その様付けやめてくれ」

「ですが――」

「軍釟でいい」

「……承知しました」

 絶対承知してない顔だった。