『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

 胸の奥へ、嫌なものが落ちた。

「何を」

『それを見てから、自分で考えなさい』

「窓路と関係あるのか?」

『あるわ』

 即答だった。

 窓路。

 母さん。

 親父。

 そして俺。

 どう考えても偶然ではない。

「親父も知ってる?」

『もちろん』

「……何隠してんだよ、あの夫婦」

『聞こえてますよ』

「聞かせてんだよ!」

 昨日は冥府庁の崩壊。

 今日は朝から天界へ呼び出し。

 普通の一日は、いったい何処へ行ったのだろう。

『軍釟』

 今度は少しだけ柔らかい声で、母さんが続ける。

『一人で来なくてもいいわよ』

「は?」

『千景ちゃんも、灯里ちゃんも、朔ちゃんも一緒にいらっしゃい』

「家族全員?」

『ええ』

 仕事の話なら俺だけでいい。窓路のボイコットに関する話なら、なおさら妻や子どもを連れていく理由などないはずだ。

 千景と目が合う。

 どうやら同じことを考えているらしい。

「何で家族まで必要なんだ」

 母さんは少し間を置いてから、静かに告げた。

『今回のことは、あなた一人の問題じゃないから』