布団の中で思わず漏らすと、隣から呆れたような声が飛んできた。
「朝からそれ?」
目を向ければ、すでに起きていた千景がこちらを見ながら笑っている。
「今日くらい休んだら?」
「休めると思うか?」
「部門長だものね」
「朝一番でそれ言うのやめてくれ」
「事実でしょう?」
昨日までなら何とも思わなかったはずの言葉が、今は妙に重い。
部門長。
しかも三年前から。
本人だけが知らなかったという、どう考えてもおかしな状況を思い返しながら身体を起こし、ベッドの端へ腰を下ろすと、両足首に巻かれているアンクレットが視界に入った。
昨日、親父に解除されたのは、そのうち片方だけだ。
俺が生まれた時から膨大すぎる魔力を抑え続けている制御具であり、その魔法を施した本人である親父でなければ解除することはできない。片側の制御が外れただけでも、短かった黒髪は銀色へ変わって長く伸び、抑え込んでいた力と神性が一気に表へ出た。
その状態で俺がしたことといえば、指を一度鳴らしただけ。
それだけで冥府庁へ雪崩れ込んだ膨大な魂をまとめて回収し、壊れた門も結界も元へ戻った。
傍から見れば大したものだったのかもしれないが、俺には達成感らしいものなど何も残っていない。ただ、やっぱり使いたくなかったという気持ちだけが残っていた。
「軍釟」
千景の声で我に返り、顔を上げる。
「何?」
「また難しい顔してる」
「元からこんな顔だ」
「そういう意味じゃないでしょう」
千景はそれ以上追及せず、少しだけ笑って先に寝室を出ていった。
俺があの姿を嫌っていることも、本来の力を解放することを避けていることも知っている。それでも、どうしてなのかと無理に聞こうとはしない。
そういうところに、俺は何度助けられてきたか分からなかった。
「朝からそれ?」
目を向ければ、すでに起きていた千景がこちらを見ながら笑っている。
「今日くらい休んだら?」
「休めると思うか?」
「部門長だものね」
「朝一番でそれ言うのやめてくれ」
「事実でしょう?」
昨日までなら何とも思わなかったはずの言葉が、今は妙に重い。
部門長。
しかも三年前から。
本人だけが知らなかったという、どう考えてもおかしな状況を思い返しながら身体を起こし、ベッドの端へ腰を下ろすと、両足首に巻かれているアンクレットが視界に入った。
昨日、親父に解除されたのは、そのうち片方だけだ。
俺が生まれた時から膨大すぎる魔力を抑え続けている制御具であり、その魔法を施した本人である親父でなければ解除することはできない。片側の制御が外れただけでも、短かった黒髪は銀色へ変わって長く伸び、抑え込んでいた力と神性が一気に表へ出た。
その状態で俺がしたことといえば、指を一度鳴らしただけ。
それだけで冥府庁へ雪崩れ込んだ膨大な魂をまとめて回収し、壊れた門も結界も元へ戻った。
傍から見れば大したものだったのかもしれないが、俺には達成感らしいものなど何も残っていない。ただ、やっぱり使いたくなかったという気持ちだけが残っていた。
「軍釟」
千景の声で我に返り、顔を上げる。
「何?」
「また難しい顔してる」
「元からこんな顔だ」
「そういう意味じゃないでしょう」
千景はそれ以上追及せず、少しだけ笑って先に寝室を出ていった。
俺があの姿を嫌っていることも、本来の力を解放することを避けていることも知っている。それでも、どうしてなのかと無理に聞こうとはしない。
そういうところに、俺は何度助けられてきたか分からなかった。


