『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

玄関の扉を開けた瞬間、ようやく肩から力が抜けた。

「ただいま……」

 我ながら、ひどい声だった。

「パパー!」

 奥から元気な声が飛んできたかと思えば、朔が勢いよく駆けてくる。

「おっと」

 反射的に抱き上げると、朔は俺の首へ腕を回しながら嬉しそうに笑った。

「おそーい!」

「悪かったな。今日はちょっと大変だったんだよ」

「ちょっと?」

 少し離れたところから、灯里が疑わしそうな顔でこちらを見る。

「パパの『ちょっと』って、大体ちょっとじゃないよね」

「……八歳のくせによく分かってんな」

「だってパパだもん」

 何だ、その理由。

 靴を脱ぎながら朔を下ろすと、リビングの奥から千景が顔を出した。

「おかえり。ご飯、温め直す?」

「ああ、頼む」

「先に座ったら? 顔がすごいことになってるわよ」

「俺、そんなにひどい?」

「疲れた人の顔」

「正解」

 ソファへ腰を下ろした瞬間、身体が沈み込むような感覚に襲われた。