『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

「……誰か一回、この冥府庁の人事制度を全部見直せ」

「それはあと」

「絶対だからな」

 渋々席へ腰を下ろすと、会議が始まった。

 各部門から状況報告が上がり、先ほどの大量流入による混乱はひとまず収束していることが確認された。しかし、死神部門だけはどうにもならない。

 部門施設には一人も残っておらず、私物も少し前から徐々に片づけられていたらしい。

 現世監察部門長・間遁が淡々と報告する。

「少なくとも数日前から、複数の死神が通常とは異なる動きをしていた記録が残っている。突発的な職務放棄ではなく、事前に準備されていた可能性が高い」

「計画的ってことか」

 高尚が眉を寄せる。

「その可能性が高い」

「理由は?」

「現時点では不明」

 円卓の一席だけが空いている。

 死神部門長・窓路の席だ。

「で、あいつら何処行ったんだよ」

 俺が聞くと、咲良は小さく首を振った。

「現在調査中」

 その時だった。

 円卓中央の通信端末が短い電子音を鳴らした。

 送信元不明。

 咲良が慎重に通知を開き、その内容を大型投影へ映し出す。

 そこにあったのは、たった数行の文章だった。

『冥府庁各位。

 死神部門は当面、魂回収業務へ復帰しない。

 これは休暇でも、単なる職務放棄でもない。

 理由を知りたければ――自分たちで調べろ。

 窓路』

 しばらく誰も口を開かなかった。

 俺は額を押さえながら、大きく息を吐く。

「……あいつ、戻ってきたらやっぱり殴る」

「私も一発いい?」

 轟由羅が即座に乗ってきた。

「並べ」

「私も」

 気づけば何人かが賛同している。

 咲良は深い溜息を吐いた。

「殴る相談はあと。まずは所在確認と、今回のボイコットの理由を調べる必要がある」

 そう言いながら、何故か俺を見る。

 嫌な予感がした。

「……何」

「軍釟」

「嫌だ」

「まだ何も言ってない」

「その顔で分かる」

「あんたにも調査に入ってもらう」

「何で俺が!」

「今日、冥府庁を丸ごと救った人だから」

「それとこれとは別だろ!」

「それに――」

 咲良が少し口元を上げた。

「部門長でしょ?」

 俺は天井を仰いだ。

「今日知ったばっかりなんだけど!」

「もう知ったんだからいいじゃない」

「良くねぇよ!」