『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

騒ぎが一段落したところで、親父が制御術を戻した。

 耳元へ移っていた装飾が淡い光に包まれ、そこから溢れていた魔力が徐々に身体の奥へ沈んでいく。背中まで伸びていた銀髪も短くなりながら黒へ戻り、最後に光が足首へ集まると、見慣れたアンクレットが再び姿を現した。

 ようやく普段の俺だ。

「……やっぱこれが一番だ」

 髪を掻きながら呟くと、すぐ横から咲良の声が飛んでくる。

「もったいないわね」

「何が」

「さっきの姿」

「二度と言うな」

「かなり綺麗だったわよ」

「やめろ」

 それだけでも十分腹が立つのに、轟由羅まで面白そうに口を挟んだ。

「いやぁ、あれは反則でしょ。普段も顔は悪くないのに」

「もういいって!」

 咲良が手を叩いた。

「はい、見物はそこまで。全員、中央会議室へ移動して。今回流れ込んだ魂は軍釟が回収したけど、死神部門が戻ったわけじゃない。このままなら、また同じことが起きる」

 その一言で、さっきまで騒いでいた連中の表情も仕事の顔へ戻る。

 確かに、溜まっていた魂を処理して壊れた門と結界を戻しただけだ。現世でも異世界でも、この瞬間にも命を終える者はいる以上、死神が戻らない限り根本的には何も解決していない。

 俺も仕方なく移動しようとして――ふと思い出した。

「……待て」

「軍釟、急ぐわよ」

「今度は流さねぇぞ」