『冥府の門番は今日も忙しい!――聞いてないぞ! 死神が仕事放棄とか!――』

「……何が?」

 嫌な予感がした。

 こういう時の親父の「簡単」は、大抵俺にとって簡単じゃない。

 螺良は俺の問いに答える代わりに片手を軽く持ち上げ、何でもないように指を鳴らした。

 パチン――。

 乾いた音が響いた瞬間、俺の足元へ巨大な展開魔法陣が浮かび上がった。

「……おい」

 白銀の光を帯びた術式が幾重にも重なりながら広がり、複雑な紋様を描いて回転を始める。

 見覚えがありすぎる。

「おい、マジでやめろ」

「何でだよ」

「これ、俺の解放術式だろ!」

「そうだな」

「止めろ!」

 螺良は悪びれる様子もなく肩を竦めた。

「お前を解放した方が楽だろ」

「嫌なんだよ! 親父がやれば済む話だろ!」

「俺が?」

「お前以外に誰がいるんだよ! 閻魔大王だろ、最高責任者だろ! こういう時くらい自分で働け!」

「いや、お前の方が早い」

「効率で息子を使うな!」

 横で結界を支えていた咲良まで呆れたようにこちらを見る。

「軍釟、そんなに嫌?」

「嫌だっつってんだろ!」

「でも、あんたが解放された方が確実なのは事実」

「お前まで親父側につくな!」