少し早めにパブに着くと、すでにクラスメイト数人がギネス片手にテーブルから手を振ってくる。マルティーノ(イタリア人)にギューベン(トルコ人)、アキム(ドイツ人)、それからマヌエルとブリジッタ兄妹(スイス人)、そして誠二とノビー、浩美、綾乃。隣のテーブルには別のクラス――優依と同じAdvancedクラスのドイツ人や韓国人、フランス人も、すでに半分くらいになったグラスを前に楽しそうにおしゃべりしていた。
カウンターでギネスを1パイントオーダーして席に着こうとすると、ちょうど優依がやって来た。着替えたらしく、昼間とは違う服を着ている。白いシャツに、青いタータンチェックのスカート姿だった。
オレに気づいて軽く手を振って、すぐにクラスメイトの方へと行ってしまった。あっちのテーブルは見事にヤローばかりだ。なのに、特に気にした様子もない優依は、荷物を置いてすぐさまカウンターへと向かった。
なんとなく面白くなくて黙っていると、マヌエルに不思議そうにされてしまった。
「Anything wrong?」
「No. Just……I'm a bit tired」
「I know. It's Friday. Everyone feels like that」
別に週末だからというわけじゃないのは、自分が一番よくわかってる。
オレは単に嫉妬しているだけ。あっちのテーブルの、男どもに。優依と楽しそうに話をする、優依のクラスメイト達に。
その後、向こうのテーブルにも優依以外の女子――エレナ(ロシア人)やルチアナ(ブラジル人)、アナカレン(スウェーデン人)がやってきても、オレはとにかく面白くなかった。ムカムカしていた。
「憧、お前、一体どうしたの?」
グラスが空になったタイミングで誠二にカウンターへと誘われ、一緒に二杯目をオーダーしたときだった。飲み物が出来上がってくるのを待つ間、呆れ顔を向けられた。
「なんでそんな機嫌悪いの?」
「……別に」
「もしかして、優依ちゃん?」
ドキッとしたのを見透かされたくなくて、わざと嫌そうにしてみた。
「どうでもいいよ、あんな女」
「あんな女って……」
誠二はあからさまにびっくりした様子で、目を見開いていた。
「どうしたのさ? 仲良さそうなのに」
「……誠二は、もういいわけ? 優依こと」
かわいい女の子には目がなく、とにかく惚れっぽい誠二は、優依が来た週からずっと優依の話ばかりしていた。日本に彼氏がいるとわかっていったん凹んだものの、その後もまあ、やっぱり気にはなっているようで、事あるごとに話題には上っていた。
「何考えてるか、わかんないんだよな、優依ちゃん。少しは脈があるのかと思ったけど、そう思ってるの、俺だけじゃなかったっぽい」
ふと、さっきの優依のスカートのことを思い出す。
以前、あのタータン柄のスカートを学校に着てきたときに、スコットランド出身の先生Simon(Elementaryクラスを担当している)に「セント・アンドリュースのタータンだね」とやたらと絡まれていた。あのあと、優依はわざわざ図書館でタータンのことを詳しく調べて、それをもとに後日、Simonとあれこれ楽しそうに話が盛り上がっていた。Simonはやけに感激して、あれ以来、担任でもないのに優依にやたらとかまうようになったから、オレとしてはなんだかもやっとしていた。Simonはまだ25かそこらの若い男の先生で、ちなみに独身だ。
「……あっちこっちで勘違いさせるビッチってことか。サイテーだな」
「口悪いな。ほんと、どうしたの?」
確かに、オレはどうしてしまったんだ?
呆れてしまったのか、席に戻った後、もう誠二は話しかけてこなかった。
カウンターでギネスを1パイントオーダーして席に着こうとすると、ちょうど優依がやって来た。着替えたらしく、昼間とは違う服を着ている。白いシャツに、青いタータンチェックのスカート姿だった。
オレに気づいて軽く手を振って、すぐにクラスメイトの方へと行ってしまった。あっちのテーブルは見事にヤローばかりだ。なのに、特に気にした様子もない優依は、荷物を置いてすぐさまカウンターへと向かった。
なんとなく面白くなくて黙っていると、マヌエルに不思議そうにされてしまった。
「Anything wrong?」
「No. Just……I'm a bit tired」
「I know. It's Friday. Everyone feels like that」
別に週末だからというわけじゃないのは、自分が一番よくわかってる。
オレは単に嫉妬しているだけ。あっちのテーブルの、男どもに。優依と楽しそうに話をする、優依のクラスメイト達に。
その後、向こうのテーブルにも優依以外の女子――エレナ(ロシア人)やルチアナ(ブラジル人)、アナカレン(スウェーデン人)がやってきても、オレはとにかく面白くなかった。ムカムカしていた。
「憧、お前、一体どうしたの?」
グラスが空になったタイミングで誠二にカウンターへと誘われ、一緒に二杯目をオーダーしたときだった。飲み物が出来上がってくるのを待つ間、呆れ顔を向けられた。
「なんでそんな機嫌悪いの?」
「……別に」
「もしかして、優依ちゃん?」
ドキッとしたのを見透かされたくなくて、わざと嫌そうにしてみた。
「どうでもいいよ、あんな女」
「あんな女って……」
誠二はあからさまにびっくりした様子で、目を見開いていた。
「どうしたのさ? 仲良さそうなのに」
「……誠二は、もういいわけ? 優依こと」
かわいい女の子には目がなく、とにかく惚れっぽい誠二は、優依が来た週からずっと優依の話ばかりしていた。日本に彼氏がいるとわかっていったん凹んだものの、その後もまあ、やっぱり気にはなっているようで、事あるごとに話題には上っていた。
「何考えてるか、わかんないんだよな、優依ちゃん。少しは脈があるのかと思ったけど、そう思ってるの、俺だけじゃなかったっぽい」
ふと、さっきの優依のスカートのことを思い出す。
以前、あのタータン柄のスカートを学校に着てきたときに、スコットランド出身の先生Simon(Elementaryクラスを担当している)に「セント・アンドリュースのタータンだね」とやたらと絡まれていた。あのあと、優依はわざわざ図書館でタータンのことを詳しく調べて、それをもとに後日、Simonとあれこれ楽しそうに話が盛り上がっていた。Simonはやけに感激して、あれ以来、担任でもないのに優依にやたらとかまうようになったから、オレとしてはなんだかもやっとしていた。Simonはまだ25かそこらの若い男の先生で、ちなみに独身だ。
「……あっちこっちで勘違いさせるビッチってことか。サイテーだな」
「口悪いな。ほんと、どうしたの?」
確かに、オレはどうしてしまったんだ?
呆れてしまったのか、席に戻った後、もう誠二は話しかけてこなかった。

