九条はのそりと体を起こすと、テレビのリモコンに手を伸ばしテレビの電源を切った。
気が変わった??
私の言葉が効いたのかな。
しん、と静まった室内でキマヅサだけが残る。
これは―――所謂喧嘩ってヤツ?
まぁ中学から一緒だから大小様々な喧嘩はしてきたけど、でもこのパターンのは初めてで、私は次にどう行動していいのか予想できなかった。
九条は立ち上がるとソファの……私の頭ら辺があるあたりの床に腰を下ろし、腕を組むと私を覗き込むようにして
「誕生日おめでと、陽妃」
と一言。
へ―――…?
お…
「覚えててくれたの?」
しかも、”陽妃”って初めて下の名前呼ばれたし。
そう、まさしくこの日は私の誕生日。だから九条のメールにも陸ちゃんのメールにもどこか意味があるのか、無意味な憶測を浮かべて返信できなかった。陸ちゃんは律儀だから毎年ちょっと豪華な食事に連れて行ってくれるけれど、九条は―――違ったから。
「毎年、この日だけはお前以外の誰とも女とは会わないようにしてた」
何それ……
「何それ!」
ガバっと起きだした私に九条はちょっと驚いたように目をぱちぱちさせ、それでもその場で腕を組んだまま動くことはなかった。
「だからって他の女が喜ぶようなことして、私が喜ぶとでも思ったの?流石、売れっ子ホストは言うことが違うね」
嗚呼、可愛げのない私。もっと『嬉しい!ありがとう!』って何で素直になれないのよ。
ん?待てよ?
別に『嬉しい』も『ありがとう』も必要ないんじゃないか?
だって私の気持ちなんて
九条に伝わってないだろうし。



