愛と優しさのちょっとした話。


【中上 海side】


ガラガラ
「おまたせ、海。どうぞ」
扉が開く音がして、すぐに冴斗の声で名前を呼ばれた。
「冴斗」
パッと顔を上げる。
一緒に出てきた冴斗の母さんは、相変わらず若い。
「あっ、湖城ちゃん。いつも息子がお世話になってます」
「こちらこそ、お世話になってます。海の前、冴斗くんだったのね」
うちの母さんと冴斗の母さんは同い年だ。
オレが小さいときから仲が良い。
母親同士が話すのを見ながら、冴斗が喋りかけてくる。
「海、なんて言われるだろうね」
「特に何もしてないし、まぁいつも通りだろ。冴斗はなんて言われた」
「基本的にはいつも通り。授業中寝るのはやめようねってやんわり」
「それはそうだろ。冴斗ほんとに爆睡してるからな」
「うるさい」
軽く言い合いをしていると、話が終わったのか、お互い母さんたちに名前を呼ばれる。
「じゃ、また。夏休みに会うだろうけど」
「そうだな。じゃあまた」
冴斗に別れを告げて、教室に入った。
「湖城さん、お久しぶりです。中上くんはこっちに座ってね」
担任の木葉先生に迎えられ、席についた。
先生は子供好きなんだと思う。
だから、めんどくさい中学生を相手に、こんなに明るく接することができるんだろうな。
オレと冴斗は、3年間木葉先生が担任だった。
冴斗も思っていると思うけど。


とても、良い先生だ。





《おわり》