愛と優しさのちょっとした話。

【木葉 実里(このは みのり)side】


冴斗くんと初めて会った時、警戒心の高い子だな、と感じた。
ピリピリしていて、心をあずけようとしない子。
悪い子だとか、言っているんじゃなくて。
『この子は危ない』
ただの直感だったけど、そうにしか思えなかった。

1年生の時の、夏休み前の三者懇談。
喋っていたのは私と沙紀さんで、冴斗くんは口を開こうとしなかった。
隙のない目をしていて、ずっと俯きがちだった。

冬休み前。
喋ってはくれるようになった。
少しずつ目に光が宿っていて、安心した。
『先生。オレは、普通になれない?』
冴斗くんは、私にそう聞いてきた。

2年生になって初めての、春。
テストの順位を、純粋にすごいと思ったからそう伝えた。
『オレには勉強ぐらいしかないから』
そう答えた冴斗くんは、寂しそうな顔をしていた。

2年生の夏休み前。
『先生。オレね、大切な人、見つけたよ』
冴斗くんは、あんまり顔に気持ちが出る人じゃない。
でも、あの時だけは、嬉しいって気持ちが伝わるぐらいの笑顔だった。

冬休み前。
『オレ、書記長になった。だから、ちゃんと頑張る。今まで支えてもらったから、次は……』
覚悟の決まった顔。
頑張ってね、って応援して、ふたりで笑った。

3年生になった春。
『なんでこの高校に行きたいの?』
『オレの、憧れの人がこの高校にいるんです。同じところに通えるのは、1年だけだけど。それでも行きたいと思ったから』
『それでなのね……。すごく良いと思う。頑張って』
『はい』
真っ直ぐな瞳で私に目標を掲げた冴斗くんは、2年前よりずっと輝いていた。

冴斗くんも、成長した。とても大きな成長。
私は、人として、先生として、大人として、それを嬉しく思っている。
本当によかった。
冴斗くんが、自分のことも考えられるようになって。