冴斗中3、夏休み前の三者懇談。
「……という感じで、色織くんは成績も落ちてないですし、このまま行けば志望の高校にも推薦で受かれるかと。本当にすごく頑張ってますよ」
成績説明の後、母さんがほっとする。
顔には出てないと思うけど、それはオレも同じだ。
「そうですか。それならよかったです。冴斗、よかったねぇ」
「うん」
嬉しさの滲んだ声でうなずく。
それを見てなのか、担任の木葉先生が笑顔を浮かべた。
「色織くんは、どんどん明るくなってきた。もう3年間担任してるけど、中1の時の懇談とは違う感じがする。先生嬉しいなぁ」
そうか。3年間、担任は木葉先生だ。
中1の時は、まだ朝の不調が治っていなくて、午前中は保健室登校だったな。
それから、碧依に会って……。
「……先生、ありがとうございました。一昨年も、去年も。周りとズレてるオレを、ずっと支えてくれて」
今までずっと思ってきた感謝を、やっと口にすることができる。
オレは、″先生″だけは、信じられた。
小中学校の先生は、オレを裏切ったことがないから。
それに何年も支えられて、今は学校に行けている。
すごく、嬉しいこと。
「先生として当然のことよ。冴斗くん、今とっても頑張ってるでしょう。私、応援したいの」
色織くん、じゃなくて、冴斗くんという呼び方になった。
いつもはそう呼ばれている。苗字で呼ぶのは、授業や懇談の時だけ。
ふっと微笑んだ先生に安心して、肩の力が抜ける。
「……応援って、大事ですよね。……先生、オレ、もっと頑張りたい。これからも、よろしくお願いします」
「私からも、お願いします」
母さんと座ったまま頭を下げる。
顔を上げ、先生の目を見た。
先生は驚いたような表情をしたあと、すぐに柔らかい笑みに戻る。
「今の冴斗くんがあるのは、おうちでのサポートが良かったからだと思います。沙紀さん、任せてください。学校での支えは、我々教員の役目ですから!」
頼れる大人の顔を見て、オレと母さんは「ありがとうございます」と伝えた。


