君と未完成を綴って。


「……詩語さん、小説書いてるの?」

「ひぇぁっ!? せせせせっ、瀬川くん!?」


音もなく現れた瀬川くんに本気でびっくりして、めちゃくちゃおっきい声が出た。

慌てて口を塞いで周りを見ると、誰もいないみたいだ。

よ、よかった……。


「せっ、瀬川くん、なんでここにっ……」

「昨日、詩語さん帰宅部って言ってたから。いるかなって、試しに。まさかホントにいるとは思ってなかった」

「試しってなんの試し……!!」


小声で叫んで、開きっぱなしのノートを高速で閉じる。

あっぶない、見られるところだった。


「どんなの書いてるの?」

「いやーえっと……あはは……」


興味津々って目で、座っている私に距離を縮めてくる瀬川くん。

いいように誤魔化しきれず、フツーに濁した。

こういう時に言葉出てこないのって、語彙力の問題じゃないと思うんだよねっ。


「読んでみたい」

「えっ、ダメっ」


一生のお願いです、とでも言うような目で見つめられる。

ダメなものはダメだ。

知らない人に見られる投稿サイトならまだしも、同級生! 隣の席の!!


「なんで?」

「なんでも!」


静かな攻防を続けていたら、瀬川くんがしゃがんで、私を見上げてきた。


「読みたい」


それはそれは可愛い上目遣い。

瀬川くん、良い意味で心臓に悪いっ!

わざとじゃなさそうなのがまたずるい……!


「……瀬川くんも、小説、読むの?」


絞り出した声は、思いのほか小さくなった。


「うん、読む。……好き」


ぽつりと床に向かって落とされた「好き」に、私が言われてるわけじゃないのに、心臓がきゅーっとなる。

あ。

……これが、いつもヒロインが体感してる、トキメキ……?


「……瀬川くん」

「なぁに?」


ぎゅっと手に力を込めながら、瀬川くんにノートを差し出した。