「おはよ!桜!」
玄関から出ると、陽菜がこっちに走りながら手を振っていた。
「おはよ、元気すぎじゃない?」
入学式の次の日なんて、面倒くさい事ばかりなのに。
「そうかな?でも楽しみだから!!」
羨ましい。私もそんなふうに思えたらよかったのにな。なんて、いつまでも嫉妬ばかりしてるから変われないんだ。
「あっ!石川くん!」
突然、聞いたことのない名前を陽菜が呼んだ。
「石川くん?」
気づいたら口から疑問が溢れていた。
「うん!昨日話した自己紹介で1発芸してたって子だよ!面白かったから話しかけたら仲良くなったんだ!」
そういえば、昨日の帰りにそんなことを言っていたな、と思い出す。
「おー!高山じゃん。おはよ〜。隣の子は?」
そっか、私のこと知らないもんね。どうしよう。とりあえず自己紹介すればいいかな?
「えっと、私は陽菜の友達の花城桜だよ。よろしくね。」
いつも通り口角を上げて明るい声を心がけた。
「俺は石川拓真!よろしくな!ってか花城って清水賢斗って人と同じクラス?」
なんで知ってるんだろう?もしかして清水くんと友達なのかな?
「うん。そうだよ。隣の席。」
そういうと彼は納得したように頷いた。
「やっぱりそうだよな!俺、賢斗とは中学の頃からの繋がりなんだけど、昨日、賢斗から花城の話聞いたんだよ。隣の席に面白い子がいるってさ!気になってたんだ!」
面白いなんて、本当にそんなこと思ってたんだ。でも、どうしよう。石川くんは自己紹介で一発芸をして、それを陽菜に面白いって言ってもらってるのに、私は面白いことなんて何も言えない。
そう思っていると今まで黙っていた陽菜が口を開いた。
「ちょっとー!仲良くなるのはいいけど私抜きで話さないでよね!」
そう言って明るく笑う。
「あ、ごめん、陽菜。」
陽菜が話に入れてなかったことに気づき謝る。
「あ、高山か、忘れてたわ〜ごめんごめん。」
石川くんはヘラヘラと笑った。
「も〜桜は許す!石川くんは許さないし!桜行こっ!」
そう言っていたずらげに笑い、私の手を引いた。
「うん。じゃあまたね、石川くん。」
無視は良くないから一応あいさつだけして手を振る。
「うん。また話そうね!」
とりあえず安心だ。嫌われては無いはずだから。
私の手を引きながら陽菜は石川くんのせいで遅刻しそう!と焦っている。入学式の次の日に遅刻はさすがにやばいと思い、二人で走った。
何とかホームルームには間に合って、説教もまぬがれた。良かった、と安心していると、昨日ぶりの声が聞こえた。
「おはよ、花城さん。ギリギリだったね!」
私が遅れそうだったのが面白い、とでも言うようにお腹を抱えて笑っていた。
「おはよ。私は遅刻しそうで焦ってたんだけどね。」
そう言うとさらに笑って
「花城さんが遅刻とか想像つかねぇ〜!」
少しからかうように言った。
「私だって想像つかないよ。そもそも入学して二日目なんだから流石に遅刻はやばいかなって。」
そう言っているとチャイムが鳴り、1時間目が始まった。1時間目から数学なんて、気分が下がる。
そう思っていると、急に雨が降り出した。そういえば、お母さんが言ってたっけ。今日は雨だから傘を持っていきなさい。って。
突然降り出した雨は、これから始まる学校生活を前に憂鬱に思っている私の心を表しているようだった。
雨は嫌いだ。
じめじめして、ただでさえ沈んでいる気分がさらに沈んで、明るく振舞おうとしても、うまくいかないことだってある。髪はうねるし、傘をさしていたって濡れてしまう。
帰りはもっと土砂降りかなぁ。
そんなことを考えているといつの間にか数学は終わって、学活の時間になっていた。
内容は、部活動紹介。お母さんからは内申点の為に、部活は入りなさいって言われていた。運動はできない訳では無いし、でも文化部の方がいいかな…?色々悩んでいると清水くんが私の方を向いて、
「ねえ、花城さんはなんの部活に入るつもりなの?」
と、キラキラとした瞳で聞いてきた。
まだ決まってなかったから、なんて返答するか少し悩み、
「まだ決まってないんだよね。清水くんは何にするの?」
と聞いた。
「俺?俺はね、写真部!花城さんも悩んでるならおすすめだよ!」
一通りの部活は見たつもりだったけど、写真部があることは知らなかった。
「清水くんは、写真を撮るのが好きなの?」
いかにも運動をしてそうなのに、写真部に入るのが意外だった。
「うん!大好きだよ!自分の好きな物をカメラに収めるのが楽しいんだ!」
聞かれたのが嬉しい、という表情でカメラについて語る清水くんを見ていると、本当にカメラが好きなんだと伝わってくるし、何よりも、そこまで好きになれるものがあることに羨ましいと思った。
私は、好きなことなんてない。お母さんには、編み物や料理が好きだと言っているけれど、それは結局、本当に好きなものではなく、お母さんの好みに合わせた趣味だ。
清水くんのように、時間を忘れるほど熱中できる趣味なんて私にはない。そう思うと、途端に自分がからっぽになった感覚になり、いつもの悪い癖が出てきた。ここは学校なんだから、と自分に言い聞かせ、必死に笑顔を取り繕った。
休み時間、クラスの女子が何人か話しかけに来てくれた。だけど、彼女達は本当の私を知らない。作り上げた偽の私だ。騙しているようで申し訳ない気持ちもあるけど、作り上げているお陰で友達ができた。きっとこれで合っているのだ。みんなの話に笑いながら廊下を歩く。
ふと窓の外を見ると、雨は強くなっていた。
折りたたみしか持ってないのにな、お母さんの言う通り、ちゃんと傘を持ってくるべきだった。
今更後悔しても遅いけど。
「雨なんて、無くなっちゃえばいいのにな。」
ボソリとつぶやく。
「桜ちゃん?なんか言った?」
やばい、聞こえてたかな…
「ううん!なんでもないよ!」
やっぱり私は普通じゃない。
みんなと話しても、話題に共感できなくて、愛想笑いしか出来ない。みんな笑ってるのに。
私だけ一人、暗闇に取り残されているようだった。
玄関から出ると、陽菜がこっちに走りながら手を振っていた。
「おはよ、元気すぎじゃない?」
入学式の次の日なんて、面倒くさい事ばかりなのに。
「そうかな?でも楽しみだから!!」
羨ましい。私もそんなふうに思えたらよかったのにな。なんて、いつまでも嫉妬ばかりしてるから変われないんだ。
「あっ!石川くん!」
突然、聞いたことのない名前を陽菜が呼んだ。
「石川くん?」
気づいたら口から疑問が溢れていた。
「うん!昨日話した自己紹介で1発芸してたって子だよ!面白かったから話しかけたら仲良くなったんだ!」
そういえば、昨日の帰りにそんなことを言っていたな、と思い出す。
「おー!高山じゃん。おはよ〜。隣の子は?」
そっか、私のこと知らないもんね。どうしよう。とりあえず自己紹介すればいいかな?
「えっと、私は陽菜の友達の花城桜だよ。よろしくね。」
いつも通り口角を上げて明るい声を心がけた。
「俺は石川拓真!よろしくな!ってか花城って清水賢斗って人と同じクラス?」
なんで知ってるんだろう?もしかして清水くんと友達なのかな?
「うん。そうだよ。隣の席。」
そういうと彼は納得したように頷いた。
「やっぱりそうだよな!俺、賢斗とは中学の頃からの繋がりなんだけど、昨日、賢斗から花城の話聞いたんだよ。隣の席に面白い子がいるってさ!気になってたんだ!」
面白いなんて、本当にそんなこと思ってたんだ。でも、どうしよう。石川くんは自己紹介で一発芸をして、それを陽菜に面白いって言ってもらってるのに、私は面白いことなんて何も言えない。
そう思っていると今まで黙っていた陽菜が口を開いた。
「ちょっとー!仲良くなるのはいいけど私抜きで話さないでよね!」
そう言って明るく笑う。
「あ、ごめん、陽菜。」
陽菜が話に入れてなかったことに気づき謝る。
「あ、高山か、忘れてたわ〜ごめんごめん。」
石川くんはヘラヘラと笑った。
「も〜桜は許す!石川くんは許さないし!桜行こっ!」
そう言っていたずらげに笑い、私の手を引いた。
「うん。じゃあまたね、石川くん。」
無視は良くないから一応あいさつだけして手を振る。
「うん。また話そうね!」
とりあえず安心だ。嫌われては無いはずだから。
私の手を引きながら陽菜は石川くんのせいで遅刻しそう!と焦っている。入学式の次の日に遅刻はさすがにやばいと思い、二人で走った。
何とかホームルームには間に合って、説教もまぬがれた。良かった、と安心していると、昨日ぶりの声が聞こえた。
「おはよ、花城さん。ギリギリだったね!」
私が遅れそうだったのが面白い、とでも言うようにお腹を抱えて笑っていた。
「おはよ。私は遅刻しそうで焦ってたんだけどね。」
そう言うとさらに笑って
「花城さんが遅刻とか想像つかねぇ〜!」
少しからかうように言った。
「私だって想像つかないよ。そもそも入学して二日目なんだから流石に遅刻はやばいかなって。」
そう言っているとチャイムが鳴り、1時間目が始まった。1時間目から数学なんて、気分が下がる。
そう思っていると、急に雨が降り出した。そういえば、お母さんが言ってたっけ。今日は雨だから傘を持っていきなさい。って。
突然降り出した雨は、これから始まる学校生活を前に憂鬱に思っている私の心を表しているようだった。
雨は嫌いだ。
じめじめして、ただでさえ沈んでいる気分がさらに沈んで、明るく振舞おうとしても、うまくいかないことだってある。髪はうねるし、傘をさしていたって濡れてしまう。
帰りはもっと土砂降りかなぁ。
そんなことを考えているといつの間にか数学は終わって、学活の時間になっていた。
内容は、部活動紹介。お母さんからは内申点の為に、部活は入りなさいって言われていた。運動はできない訳では無いし、でも文化部の方がいいかな…?色々悩んでいると清水くんが私の方を向いて、
「ねえ、花城さんはなんの部活に入るつもりなの?」
と、キラキラとした瞳で聞いてきた。
まだ決まってなかったから、なんて返答するか少し悩み、
「まだ決まってないんだよね。清水くんは何にするの?」
と聞いた。
「俺?俺はね、写真部!花城さんも悩んでるならおすすめだよ!」
一通りの部活は見たつもりだったけど、写真部があることは知らなかった。
「清水くんは、写真を撮るのが好きなの?」
いかにも運動をしてそうなのに、写真部に入るのが意外だった。
「うん!大好きだよ!自分の好きな物をカメラに収めるのが楽しいんだ!」
聞かれたのが嬉しい、という表情でカメラについて語る清水くんを見ていると、本当にカメラが好きなんだと伝わってくるし、何よりも、そこまで好きになれるものがあることに羨ましいと思った。
私は、好きなことなんてない。お母さんには、編み物や料理が好きだと言っているけれど、それは結局、本当に好きなものではなく、お母さんの好みに合わせた趣味だ。
清水くんのように、時間を忘れるほど熱中できる趣味なんて私にはない。そう思うと、途端に自分がからっぽになった感覚になり、いつもの悪い癖が出てきた。ここは学校なんだから、と自分に言い聞かせ、必死に笑顔を取り繕った。
休み時間、クラスの女子が何人か話しかけに来てくれた。だけど、彼女達は本当の私を知らない。作り上げた偽の私だ。騙しているようで申し訳ない気持ちもあるけど、作り上げているお陰で友達ができた。きっとこれで合っているのだ。みんなの話に笑いながら廊下を歩く。
ふと窓の外を見ると、雨は強くなっていた。
折りたたみしか持ってないのにな、お母さんの言う通り、ちゃんと傘を持ってくるべきだった。
今更後悔しても遅いけど。
「雨なんて、無くなっちゃえばいいのにな。」
ボソリとつぶやく。
「桜ちゃん?なんか言った?」
やばい、聞こえてたかな…
「ううん!なんでもないよ!」
やっぱり私は普通じゃない。
みんなと話しても、話題に共感できなくて、愛想笑いしか出来ない。みんな笑ってるのに。
私だけ一人、暗闇に取り残されているようだった。
