『みすとら』 小さな恋の物語

学園に通えることになって、両親はたいへん喜んでいました。
「高校の国語教師をしながら、毎週のように新聞社に俳句を十句ずつ送り続けた! 十年目でついに、その努力がついに実った! お前を名門の私立『夢見が丘・希望の星・自ゆう愛学園』に通わせることができるのだ! これ以上に嬉しいことはない!」父は、感情を爆発させていました。
「(その努力は、関係ないと思います・・・)」私は冷静でした。父が興奮しているので、何も言いませんでした。
「か~さんもね。毎日スーパーで買い物したお釣りを一回につき十円ずつ貯めていたの! コツコツ貯めたから、ようやく3万円を超えました! みんなで、美味しいもの食べようね~」
「(それも関係ないと思います。それに、あまり貯まっていないね~・・・)」私は冷静でした。
「とにかく、お家の一大事だ! きよ美さん、しっかり勉強してきてください!」父の興奮はおさまりませんでした。
「きよ美さん、お嬢さま生活の始まりです。まずは、食事の作法から勉強しましょう!」母も、盛り上がっていました。それからしばらく我が家では、宝塚歌劇団を観に行ったり、週末はレストランで食事のマナーの特訓が始まりました。急遽、バレエとピアノも習うことになりました。そのため、大好きな絵を描く時間が少なくなりました。今思えば、必要のない努力でした。
「(まぁ、いいか・・・)」

小学校の思い出は、あまりありません。中学から学園に通うことになったことも、誰にも教えませんでした。というより、話す相手がいませんでした。
静かに小学校を去って、静かに新しい学校に通うことになる。
日付が変わって、新しいステージが自動的に始まる。
私にとって、卒業とか入学というものは「居場所が変わるだけ」という感覚でした。
「?(おかしいな・・・。
小学生の時は、普通の公立の小学校だった・・・。
小学生の時に、学園にいた記憶もある・・・。
何で? 詳しく覚えていない・・・)」この疑問は、私だけでなくユキもカスミも持っていました。