『みすとら』 小さな恋の物語

スタスタスタと、ドラキュラがそよりさんに近づいて行きました。
「お嬢さん、少しだけ血を吸わせてください」ドラキュラが、そよりさんに言いました。
「お断りします」と頭を下げながら断ると、スタスタ行ってしまいました。
「吸えると思ったのに、あーざんねん・・・」棒読みで立ち去りました。スタスタスタと歩いてクルリと向きを変え、ユキに近づきました。
「お嬢さん、少しだけで構いません。お願いですから血を吸わせてください」ドラキュラがユキに言いました。
「貧血ぎみなので、ダメです」と断られると、スタスタスタ歩いて立ち去りました。
「吸えると思ったのに、あーざんねん、ラーメンでも食いに行こう・・・・」棒読みのまま、表情を変えずに体育館を出ていきました。
「私たちには聞かないんだね」私は不思議に思いました。
「栄養がなさそうだからじゃない?」ユキが笑っていました。
「カスミはしぼんじゃうもん」カスミも声をかけられなくて安心していました。
一反木綿は、体育館の端から端を飛び回っていました。カスミは追いかけていましたが、捕まえられませんでした。諦めないカスミを見かねた一反木綿はカスミを乗せて飛んでくれました。
「いやっほ~! わ~い!」一番楽しそうでした。一反木綿も楽しそうでした。
ぬりかべは、最初から最後まで邪魔にならない場所でじっとしていました。
ケンタウロスとペガサスは、ケンカなのか、追いかけっこをして、いがみ合っていました。そよりさんとユキが、
「あな゛たたち、ケンカは、や゛めなさいよ!」と仲裁すると、
「ふんっ!」
「ぶんっ!」とお互いに鼻を鳴らし、それぞれに背を向けました
ケンタウロスは、そよりさんを背に乗せて、体育館中を駆けずり回りました。
「どっしゃ~! これでもか~! どうだ~!」ケンタウロスは気合が入っていました。
「速いわ~! ステキだわ~!」そよりさんが感情を出すのは珍しいことでした。
負けじとペガサスもユキを乗せ、空中を飛び回りました。
「負っけるか~! どっりゃ~! ぎゅい~ん!」ペガサスも気合を入れて対抗していました。
「すっご~い! 飛んでる~! すってき~!」ユキが興奮していました。
ケンタウロスとペガサスはプライドをかけて、全員の女子を背に乗せて喜ばせていました。一反木綿は、カスミしか乗せることが出来ないので、カスミがケンタウロスやペガサスと遊んでいるのをさみしそうに眺めていました。
私がケンタウロスの背中に乗ると、
「これは、乗せやすいね!」と言って、体育館を出て校庭中を駆けずり回ってくれました。
「速い! 速い! 速い!」私は興奮しました。