『みすとら』 小さな恋の物語

体育館に行くと、中央にブルーシートで覆われた巨大な檻が準備されていました。ステージ上には、日傘がさしてあり四畳半ほどの茶室セットが組まれていました。校長先生がそこに座ると、着物を着た女性がお茶をたてはじめました。お茶の準備ができると、三味線を弾き始めました。校長先生は、ゆったりとお茶を楽しみ始めました。
「(何をしているんだろう・・・?)」私たちは、校長先生の謎の行動が理解できませんでした。
松柳先生は、巨大な檻の前に立ちブルーシートを取りました。
檻の中にいたのは、ミイラ男、パンダコアラ、ペガサス、ケンタウロス、ドラキュラ、一反木綿、ぬりかべでした。
「! 何これ?」そよりさんは驚いていました。
「! え? 怪物なの? ドーブツじゃないの?」ユキも驚いていました。
「! え? どーするの?」私は、混乱していました。
「・・・」ここあちゃんは何も言いませんでした。
「あは~」カスミは状況を理解していませんでした。担任の先生は、例によって、体育館の端っこで携帯電話をいじりながら動画を見始めました。

ジリジリと、ミイラ男がにじり寄って来ました。包帯のすき間から片目だけ見えましたが、網目状に充血していました。白目は黄色でした。右手の包帯がほどけており、左足の包帯を引きずっていました。
「うへへ、うひひ、ぐへー」と言いながら、そよりさんのスカートのすそを引っ張りました。
「や゛め゛て゛よ゛―!」とそよりさんが強めに言うと、ミイラ男は逃げていき、檻の中をドタドタ走り回った後にユキにも同じことをしていましたが、ビンタをされてひるんでいました。ミイラ男はそのまま、私のところにジリジリと近づいてきました。
「ガバッ」と私に飛びつき抱きついてきました。
「! (気持ち悪い! やめてー!)」虫唾が走りました。すると、ここあちゃんが近づいて来て、ミイラ男の肩を触りました。
「ダ・メ・よ!」無表情ですが、怖い顔をしていました。たちまちミイラ男は、ダンゴムシに変わりました。
『がばぺと!』
「残念ながら、この子は脱落ね・・・」ここあちゃんは何故か、淋しそうな表情をしていました。

【坂端潔彦(さかばたきよひこ)】『幼少期から優秀で、全国模試で1桁順位を何度か叩き出す。脱落後に、財務省事務次官まで出世を果たした。そして、とある資産家の令嬢と結婚するが、DVと浮気をくり返し離婚。結果として、生涯年収は参加者の中で一番高かった』と言う人生を歩む運命かも知れない。しかし、ここで脱落(させん)。

「(何を脱落したんだろう・・・? それは、ここあちゃんが決めたのだろうか・・・?)」私はずっと疑問に包まれたままでした。