愛しのオオカミ

黙って修の隣を歩く美紀は、ひとり気まずさを感じて話題を振れずにいた。


(そうだよね…亮太くんが良かったからって、黒井くんも良いなんてことないよね。恥ずかしい…友達の距離感って難しいな…)


「この辺りはよく来るのか?」

「え!?あ、うん、莉奈…友達と…」


しばらく歩いていると、雑貨屋につき、二人は店内に入った。
日用品や菓子類などが商品棚に並ぶなか、美紀は真っ先にタオルが陳列されているコーナーへ向かう。


「…青…うーん…黄色?あ、緑も似合うかも…」


ブツブツと呟く美紀の様子を観察しながら、周囲や店内を見渡す修。
店内の女性の多さに、少し眉を寄せ、美紀へと視線を落とした。


「黒井くんは何色が似合うと思う?」

「………何の話だ?」

「タオル!亮太くんにお礼したくて…何色がいいかなぁ?」

「…何色でもいい」

「えぇ!?…うーん……こっちとこっちなら?」


美紀はオレンジと水色のタオルを持って、修を見上げた。


「…押花はどっちがいいんだ?」

「そ、それはずるい聞き方…うーん……オレンジ…?」

「なら、それにすればいい」


少し不安げに迷う美紀は、チラッと修を見てしまう。
すると、ため息をつきながらも、修は口を開いた。


「土師なら、押花が選んだ方が喜ぶんじゃないか?」

「……ありがとう…!買ってくるね!」


パタパタと会計に向かった美紀を見送ったあと、修はタオルをじっと見ていた。


「おにいさんの彼女さんじゃないの~?」

「……」

「さっきから見てたけど、別の男の子にあげる物、選ばせちゃダメよね~?」


クスクスと笑うエプロンを着けた店員らしき女性が話しかけてくると、修はジロッと横目で見て、すぐに視線を戻した。


「おにいさんも、イヤならイヤって言わないと~。そのタオルの子に、持ってかれちゃうわよ?」

「……」

「黒井くんお待たせしました!…?あ…お知り合い…?」

「いや…行くぞ押花」


笑顔で戻ってきた美紀の手を掴み、雑貨屋をあとにする修だが、美紀はよくわからないまま連れていかれる。
笑っていた女性店員は、同僚に小言を言われた。


「あんたね~、お客様!しかも学生っぽいんだから!ちゃんとしなさい!」

「だぁって~、女の子も可愛いし、つい…また来てくれないかしら~」


両頬を押さえて、名残惜しそうに美紀たちを見送った。