愛しのオオカミ

水道の蛇口を捻って、水を止めると、手を拭きながらおばあちゃんに振り返る。


「…おばあちゃん…私、おばあちゃんに会えて嬉しいよ」

「ありがとうねぇ。…ただね、両親のことわからんから、墓参りとかは連れて行ってあげれんから…」

「いいよ!…交通事故っていっても、全然覚えてないし…今はおばあちゃんがいるから!」

「……今日はから揚げにしようねぇ」

「やったぁ!」


笑顔を見せる美紀を見ると、おばあちゃんは立ち上がって、ポンポンと背中を優しく叩いた。


美紀は2歳の頃に両親を交通事故で亡くし、施設で暮らしていたところ、遠方の今のおばあちゃんに引き取られて暮らしていた。
不自由もなく、本当の孫のように愛情を注いでくれるおばあちゃんが、美紀は大好きだった。


おばあちゃんが買ってきた食材を取り出して、さっそく仕込み始める。
美紀もすぐにボウルなどの調理器具を取って、台所に並んで手伝いをした。


「これ、切っていい?」

「ひと口くらいでいいからね」

「おばあちゃん、これは?」

「それは、醤油とみりん、あ。あと酒(料理酒)を入れて混ぜてねぇ」


慣れた手つきと呼吸で、二人は各々の料理の仕込みを終えていく。


「…今日は何かあったんね?」

「え?……えっと、先輩に声をかけられてね…ちょっと困ってたら…その、友達が助けてくれて…」


恥ずかしくなってそれ以上のことが言えなくなる美紀。
おばあちゃんは、揚げ物の鍋に油をたっぷりと入れて、火をつけた。


「美紀はいいお友達持ったんやねぇ」

「…うん…!」


亮太の顔を思い浮かべて、笑顔で頷いた。
片栗粉をまぶした肉を、温まった油の中に入れていくおばあちゃん。


「あ、その子とかね、勉強してるって子」

「うん。ちょっと勉強が苦手みたいだけど、運動はすっごくできてね!昼休みとかも違うクラスの人に誘われてるくらいなの」

「人気者やねぇ」

「そう!亮太くん、人気者なんだよ!」


嬉しそうに笑う美紀を横目に、おばあちゃんの口元も緩みながら、お肉を揚げた。


「はい、味見して」

「あちっ、あふ…はふ……おいひぃ!」

「ふふ、美紀が味付けたんよ」

「え!?おばあちゃん、仕上げてくれたんじゃないの?」

「なぁんもしとらんよ。…ん。おいひぃねぇ」


二人でモグモグと味見のから揚げを食べると、一緒に笑った。
料理ができる自分や教えてくれるおばあちゃんに感謝しながら、美紀の頭に一つの考えが過った。