愛しのオオカミ

…ー

帰宅した美紀は、おばあちゃんに挨拶もせず、すぐに自室へこもってしまった。
着替えを済ませれば、ベッドに横になり、頭から掛け布団を被ってクッションを抱きしめていた。


(…亮太くん、走ってきてくれたんだなぁ…)


クッションを抱きしめる手に力が入ると、ハッと思い返してしまう。


(わ…わ…!亮太くんに、私…だき、抱き……!!)


顔に帯びる熱を感じる美紀は、ギュウッと目を閉じてクッションに顔を埋めた。
ふと、いつも途中で助けてくれる亮太の存在を思い返す。


(…何かお礼したいけど…うまくかわされちゃいそう…。亮太くんにできること何があるかな…)


笑っている亮太を思いながら、布団から顔を出す美紀は、いまだにクッションを抱きしめていた。


(いつもいろんな人に囲まれてるし、話しも上手だし…コツみたいなものがあるのかな…今度聞いてみようかな…)


ようやく、むくりと起き上がるが、クッションは手放さない。


「………は、初めて男の子と手、繋いじゃった……」


ぽつりと呟くと、引きかけていた顔の熱を再び感じるのと同時に、胸の鼓動の速さも感じる。
ようやくクッションから手を離すと、その手を見て亮太の顔を思い浮かべた。


(…あったかかった……)


「美紀~?帰ってるの~?」


玄関から聞こえてきたおばあちゃんの呼びかけに、体が跳ねると、慌ててベッドから降りて部屋を出た。
早足に玄関へ向かうと、大き目の荷物を置くおばあちゃんに声をかける。


「おかえり。買い物行くなら言ってくれてよかったのに…」

「テストあったんだから、そっち頑張らんね。今日で終わりやったかね?」

「うん。…あ、明日、ちょっと出かけてくるね」

「はいはい。お昼はいるんね?」

「うーん…まだ決めてないけど、余ったのでいいよ」


荷物を運ぶ美紀は、おばあちゃんと一緒に台所へ向かうと、おばあちゃんは椅子に腰かけひと休みした。
美紀は、そのまま冷蔵庫に食材を入れて、荷物を片付けていく。


「今日は、私が作ろうか?」

「手伝ってくれるだけでええよぉ」


片付け終えると、自室に戻り、空になった弁当箱を持ってきて洗い始める美紀。
おばあちゃんは冷蔵庫から麦茶をとり、コップに入れて飲んでいる。


「…テスト、どうやったん?」

「うん。いつもどおりかな」

「美紀は両親に似て、よくできる子なんやねぇ」

「はは…どうかな…」


ゴシゴシと泡立てて弁当箱や蓋の汚れを擦り落とし、すすぎ洗いをした。


「美紀がうちにきてくれてから、ばあちゃん、本当に嬉しいよ」

「…ん…」


水の流れる音と一緒に、美紀の小さな返事も流れた。