愛しのオオカミ

亮太と二人で教室に戻るが、修の顔をなかなか見れない美紀。
すると、背中をポンと軽く押される。

美紀は顔を上げて、自分の席に向かいながら、修を見た。


「…さっきの、英文の翻訳、続きしよう…!」

「…あぁ」

「オレ、化学お願いしま~す」


英文の解説を始めた美紀と修。
時折、質問を挟みつつ終えると、美紀が問題を作って出した。

そして、亮太の方を向くと、二パッと笑って化学の教科書を持って待っている。
つられて笑顔を見せる美紀は、嬉しそうに亮太に化学の問題を教えだした。


「あ。土師くん、そこ違うよ」

「うん。美紀ちゃんも違うね」

「え?」


ニコニコと笑う亮太を見ていると、ハッと気づいて顔を赤くしながら、恥ずかしそうに口を開ける。


「………亮太くん…ここの部分違うよ…」

「はーいっ」


明るく返事をする亮太は、指摘された箇所を消しゴムで消して、書き直し始めた。
そんな二人の様子をじっと見ていた修は、頬杖をついて解いていた問題に視線を戻す際に、ジロリと亮太へ視線を向けた。

美紀は自分のノートを見直していたため、修の視線には気づかない。


「押花、解けた」

「うんっ、………うん、正解。合ってるよ!」

「……」


じっと見てくる修と目が合うと、つい視線を泳がせてしまう美紀。
眼鏡をかけ直していると、修が自分のノートをトントンと叩き、指をゆっくりと動かして丸印を作っているのに気づいた。


「……?」

「…押花の丸が欲しい」

「…あ……うん…」


赤くなる美紀は、同じ色の赤ペンを取って、修の解答に丸を付ける。
少し物足りなさを感じると、美紀はそのまま花丸にした。


「あー!いいなぁ!オレも美紀ちゃんから花丸欲しい!」

「…お前は間違えてるだろ」

「合ってたらもらえるもんね~」

「…亮太くん、ここまだ違う…」


修のノートを覗き込んだ亮太だが、美紀のレ点チェックが入ると、大人しくなった。
美紀は二人を見守りながら、自分の課題を終わらせ、教科書を見直す。

時折、二人からの質問に答えつつ、解説や雑談を挟み、飲み物を飲んだ。


「テスト終わったら、体育祭だね~。黒井くんとこは、体育祭どんな感じだったの?」

「…そう変わらない。普通だ」

「他の学校じゃ競技違うじゃ~ん。今年はどう決まんのかな~…ワクワクすんね、美紀ちゃん」

「………」

「はら?そうでもない?」


気まずそうな表情を見せる美紀は、小さく頷いた。