愛しのオオカミ

…ー


(どうしよう……早く出ないと…)


一度教室に戻ってきた三人だったが、美紀がすぐにトイレへと行き、個室に籠ってしまっていた。


「はぁ~……」


長いため息をこぼしながら、両手で顔を覆う美紀。
自販機に行くまで、行ってからの出来事を思い返しては、自分の気持ちにモヤモヤしていた。


(土師くんは誰とでも仲良しになれていいな…と思うし、柳川さんにも…いいなって…思う自分が嫌だなぁ…)


悶々と考えが巡る美紀は、自分の頬をペシッと叩く。
しかし、今朝のことも思い出して、ジワッと涙が浮かんできた。


(自分勝手すぎる…!)


ゴシゴシと袖で涙を拭うが、次から次へと溢れてくる。


「土師くんなにしてんの?」

「待ち合わせ~」

「トイレ前は変態すぎる」

「ひどっ」


笑って去って行く女子生徒の声を聞き終えたあと、美紀は勢いよく個室からでて手を洗う。
温風乾燥機で手を乾かすと、ぎこちなくトイレから出た。


「トイレ前で待つ変態です」

「……ご、ごめ…っ」

「…また泣いた?」


優しく笑う亮太は、美紀の目に残る涙を見て、そっと手を伸ばして拭った。
ピクッと肩が跳ねる美紀だが、不思議と嫌ではなかった。


「なんで泣いてんの?」

「こ、これは…その…」

「オレ、押花ちゃんのピンチ遭遇率校内イチだよ?」

「……い…いいな…って…。土師くんも黒井くんも…いろんな人と仲良くて…」


言葉と共に、ポロポロとまた涙が落ちていく。
亮太は美紀に近づくと、涙が出る度に拭ってくれた。


「ふ、二人と…仲良くなれた…って、思ったけど…なんか…遠くて…」

「美紀ちゃん」

「…!」

「オレ、ここにいるよ~?美紀ちゃんと仲良くなれて嬉しいし、心配だから迎えに来たんだけどな~?」


亮太の言葉に涙がこぼれるものの、今度は顔が赤くなる。


「ごめ…土師く」

「亮太」

「……亮太くん…」

「うん。トイレ前で出待ちする亮太くんだけど、美紀ちゃんに変に思われたくないです」


思わず吹き出してしまう美紀は、ようやく少しだけ笑った。
微笑む亮太は、ポンポンと優しく頭を撫でる。


「ん。美紀ちゃんは笑ってる方が似合うよ」

「…ありがとう…亮太くん」


これ以上何も言及されないことを察した美紀は、少し安心して笑みを見せた。


「やっぱり教えてもらうなら美紀ちゃんがいいな。黒井くんに聞いても、まったくわかんないや」

「そう…なんだ…」

「美紀ちゃん先生がオレには必要なわけ!」


ふふっと笑い合う美紀と亮太。
その様子を、教室から出かかっていた修が見て、自分の席に戻った。