愛しのオオカミ



「…と、友達と…勉強会したの…」

「あらぁ、そうなんね。良かったねぇ」

「うん、莉奈以外の人と勉強するの初めてだったけど、楽しかったよ」


美紀は煮びたしを箸でつまみ、口に運んだ。


「…あ、ひとりはね、この前転校してきてね。苦手な科目があるみたいだったから、思い切って誘ったの」

「そうかね。なら、その子も嬉しかったやろうねぇ」

「え?」

「来たばかりな子ぉなら、なかなか聞きにくいことの方が多いだろうしねぇ」


おばあちゃんの言葉で、修の言葉を思い返す。
ノートを返してくれたとき、今日の帰り道…。


「……そっか。そっかぁ…そうだと私も嬉しいなぁ…」

「良い友達なれたねぇ」

「うん…!おばあちゃん、これおかわり!」

「はいはい」


笑顔になって頷くと、ごはんのおかわりをよそった。


(…友達…えへへ……このまま頑張って、クラスのみんなと仲良くなりたいな…)


いまだに口元を緩ませる美紀は、週明けが初めて待ち遠しと思った。

















…—

月曜日、5月の下旬に入る週となるが、変わらず朝一番に教室を開けて中に入る美紀。
教員から受け取った小さな花束を、後ろの棚の花瓶の横において、先に窓を開けた。

少しして、ガラッと教室のドアが開く。


「土師くん、おはよう」

「やっぱか。おはよう押花ちゃん」


二パッと笑った亮太は、自分の席にバッグを置くと、残りの窓を開ける手伝いをした。
そのまま任せた美紀は、新しい花と花瓶を持って、手洗い場に行く。


(自分から言えた…今日はいいことありそう…!)


なんとなく感じる高揚感に、美紀の期待は高まった。
枯れてしまった花を取り替え、新しい花が包まれていた包装紙に包み直すと、近くのゴミ箱に捨てた。

少し時間がかかってしまったが、教室に戻ると、もう生徒が集まり始めていた。


「おはよう…!」

「おはよう押花ちゃん!」

「おはよう~」


教室の入り口にいたクラスの女子生徒に、自分から挨拶をしてみると、笑顔で返ってきた。
後ろ棚の方へ歩いて行くと、修も席についている。


「黒井くん、おはよう」

「……」


コクンと頷くだけだが、その返事だけでも嬉しくなる美紀。
花瓶を棚に置いて振り返ると、教室のドアから金木が入ってきた。


(あ……ふ、普通に、普通に…)


ぎこちなくも、自分の席を通り過ぎて、金木の方へ歩み寄る。


「か、金木くんっ、お、おはよう…!」

「押花さん、おはよう」


緊張気味の美紀とは反対に、笑顔で挨拶を返す金木は、美紀の横を通り過ぎようとした。


「え…?」

「ん?何か用事?」

「…えっと、…先週は…その…話のことなんだけど…」

「話?…ごめん、なんのこと?」

「…え…金曜の放課後……」

「?誰かと間違えてない?僕、その日はすぐに帰ったと思うんだけど…」


話の途中で金木が他の男子生徒に呼ばれると、返事をして美紀から去って行った。
呆然と立ち尽くす美紀は、視線が落ちた。