愛しのオオカミ


帰宅した美紀は、リビングでテレビを見ていたおばあちゃんに声をかけた。


「ただいまぁ」

「おかえりぃ。あら~もうそんな時間。ちょっと、この再放送見てからご飯作るからねぇ」

「うん。じゃあ、私勉強してるね」


リビングを出て自室に入り、ドアを閉めると、ドアを背もたれにしてその場にズルズルと座り込んだ。
ポケットの中に手を入れて、折りたたんだメモ紙を取りだすと、ゆっくりと文字を目で追った。


『押花さん、また学校で。—金木』


メモ紙を床に置き、自動販売機前の金木くんの様子を思い返す美紀は、膝を抱えて顔を埋めた。
しばらくして顔を上げると、メモ紙を折り直して、机の下に潜り込んで【煎餅】と書かれた缶の箱を取り出す。

蓋をカパッと開けると、いくつもの色とりどりの紙や封筒があり、その中に金木からのメモ用紙を入れて、蓋を閉じた。


「…はぁ…」


小さくため息をこぼすと、また元の場所に缶の箱を戻し、立ち上がって制服から部屋着に着替えた。
そして、机についてバッグから教科書とノートを取り出し、勉強する体制を整える。

すると、現国のノートを開いた際に、今度はしわくちゃのメモ用紙が出てきた。


(…土師くんがくれたのだ)


改めて開いて見ると、フッと口元を緩ませてくしゃくしゃなメモ用紙を机に置いた。
それを眺めながら、勉強を始める美紀。




しばらくすると、台所から名前を呼ばれているのに気づき、時計を見た。
もう19時半だ。

教材を片付けてから自室を出ると、台所に顔を出す。


「おばあちゃん、ごめんね。時間気づかなかった」

「頑張り屋さんやねぇ。ごはんとみそ汁よそって」

「あ、煮びたし。私これ好き」

「美紀はばあちゃんのご飯、全部好きやろう?」

「うんっ」


笑顔で答えながら、ごはん茶碗とみそ汁のお椀を取り出す。
炊飯器の前に行き、自分の分とおばあちゃんの分のごはんをよそった。


「おばあちゃん、このくらいでいい?」

「少なくてええよぉ」

「…最近、食べるの減ってるよ…?」

「さっき、西川さんとこでもらったおはぎ食べたんよ」

「も~…甘いのは控えないと…」


茶碗を配膳しながら、心配そうにおばあちゃんに小言を言ってみるものの、笑い飛ばされてしまった。
おばあちゃんが注いだみそ汁も配膳し終えると、二人が食卓に着く。


「いただきます」

「今日は、なぁんかいいことあったんね?」

「え!?な、なんで?」

「ずーっとニコニコしるからねぇ」


モグモグと食べながら、放課後の出来事を思い返した美紀。
咀嚼したごはんを飲み込むと、照れくさそうに小さく頷いた。