愛しのオオカミ

先を歩く修が立ち止まって振り返って見つめてくる視線を、追い風を受けながら見つめ返す美紀。
ふと気づいて、修の方へ足を進めた。


「黒井くんは、前の学校でも、と…友達と勉強したりしてたの?」

「…いや。してない」

「え!?い、嫌じゃなかった…?って聞くのも変だよね…」

「……土師も言ってたとおりだ。それに押花の説明はわかりやすい…と思う」

「あり…がとう」


並んで歩いていると、気づけば駅についてしまった。
ポカポカした気持ちになりながら、定期券を改札に通した二人は、駅のホームへ降りて行った。

階段をおりてすぐに、ドンッと何かとぶつかる美紀。


「…っ!」

「わぁ!ごめんなさい!すみません!!」

「こちらこそ…ごめんなさい…」


修の腕に支えられながら相手を見ると、ツインテールの髪型に、同じ制服を着た女子生徒だった。
ぶつかった相手が顔を上げれば、美紀を見て驚きの表情を見せる。


「わ!!押花美紀センパイだ!!可愛い!!」

「うらら~!はやくきなよ~」

「え、あ、わ!えっと、本当にすみません!それじゃあ!」


遠くにいた友人らしきグループに声をかけられ、女子生徒はそのまま去ってしまった。
風に吹かれたような颯爽とした出来事に、美紀はぽかんとしたままだった。

しかし、ハッと気づけば、ずっと支えてくれていた修から離れる。


「ご、ごめんね…ありがとう!」

「……」


眼鏡をかけ直して、おもむろにスカートをパッパッと払う仕草をとった。


「なんだか…黒井くんに支えられることが多いね…気をつけるね…」

「…いい。押花なら、支える」


じっと見たまま答えてくれる修の言葉に、頬をほんのりと染めると、また嬉しい気持ちになる美紀。


(…友達って…いいなぁ…)


ふふっと小さく笑みがこぼれるのを見ると、修は美紀の頭をポンと撫でた。
驚きのあまり、思わず顔を上げて修を見た。


「…わるい…」

「う、ううん……」


すぐに手を離した修は、美紀から顔を逸らし、違う場所へ視線を向ける。
初めて感じる修との妙な沈黙に、美紀は下を向いた。


(笑うとこだったのかな…さっきの返事で合ってたかな…)


美紀の考えをかき消すように、電車がホームに入ってきた。
ふと、先ほどかけて行った女子生徒の方向を見れば、談笑しながら同じ電車に乗る様子がわかる。

少しの羨望のような眼差しになりかけるも、構わず修と電車に乗り込んだ。