愛しのオオカミ


「とっ、とも…一緒に勉強するの…楽しいなって…!」


美紀はほんのり頬を染めつつ、言い終えると、目を逸らして二人の反応を待ってしまった。
亮太はニコッと笑てって、頷く。


「オレも押花ちゃんのおかげで楽しい~。友達との勉強ってのもいいもんだね?黒井くん?」

「……まぁ…」


顔を上げた美紀の表情は、わずかに明るくなった。
肩にかけたバッグを持ち直すと、二人に並んで、下駄箱へ向かった。


下駄箱の扉を開けて、外靴に履き替えると、美紀の方から小さなメモ用紙が落ちたことに気付いた修。
すぐに拾い上げて、美紀に差し出す。


「…え?」

「落ちてた」

「ありがとう……」


そっと開いて見ると、慌ててメモを閉じてポケットに入れた。
その様子をじっと見ていた修に、苦笑いしていると、亮太がひょっこりと顔を出す。


「そういや、二人は電車だっけ?オレ、バスで時間きてるから、先行くね!んじゃあ、押花ちゃん今日はありがとね!」

「ううん。気をつけてね」

「ほーい!」


バタバタと早足に去って行った亮太を見送ると、残った隣の修に視線を向けた。
じっとしたまま動かない修。


「…えっと、帰ろう…?」

「……」


コクリと頷く修は、そのまま歩き出し、美紀もあとに続いた。
亮太がいないだけで、沈黙のままになってしまうのに、申し訳なさやら焦りやらが出てくる美紀。

なんとか話題を出そうと、貸した本のことを考えるが、躊躇った。


(ネタバレになるくらい話しちゃいそうだし…それだと貸した意味もなくなるし……あ。)


「黒井くんは、その…普段、本屋さんとか行くの?」

「…出かけたときのついでに行くくらいだ」

「そっか……えっと、この辺りね、割と大きな図書館があるから、いろんな作家さんの本もあるから、おすすめ…です…」

「…わかった」


修はすぐにスマホを取り出して、何かの操作を始める。
話題が終わってしまったことに、少し落ち込み気味になるが、先ほどの亮太の笑顔を思い出して、もう一度口を開いた。


「あのっ、土師くんも…友達って言ってくれたね…」

「……」


スマホから顔を上げた修は、チラリと美紀に視線を向けた。
嬉しそうな、照れたような笑みをこぼす様子を見ていると、急に肩を抱き寄せる。


「…!?」


美紀の横を勢いよく自転車が通り過ぎた。
思わず止まってしまっていたが、その状況を理解すると、慌てて修から離れた。


「あっ、ありがと…!ごめんね!?」

「…いい」


パッと手を離されると、美紀の心音はドッドッと、早く脈打っていた。