愛しのオオカミ

そして、昼休みに入ると、ランチバッグを持った美紀は、いつもどおり人気のない階で莉奈と昼食をとる。


「ん~!莉奈のとこの卵焼きも美味しいね~」

「美紀のばあちゃんとこのも美味しい。家によって違うってほんどだね。…んで?」

「え?」

「昨日の図書室、黒井くんになにもされてない?」


モグモグと食べていた美紀に、視線を向ける莉奈。


「だ、だからっ、黒井くんは助けてくれたんだよっ。吉村くん?っていう人とも特に何もないし…莉奈の方こそ…」

「私の方も大丈夫だって。むしろ美紀のこと教えて~って男子から頭下げられるくらいだし。まぁ、教えるわけないけど。…だから、中学のときみたいこと、ならないからさ。ね?」

「……うん…」


食べ終えた莉奈の気遣いを感じつつ、美紀も残りのご飯を食べ終えた。
ランチバッグに弁当箱を入れていると、飲み物を飲んでいた莉奈がふと口を開く。


「黒井くんといえば。うちの女子が話してたけど、全然しゃべんないんだって?」

「え…?」

「話しかけてもスルーだってさ。冷たそうって思ったけど」

「や、優しいよ!…ちょっと怖いけど…」

「…ま、美紀を助けてくれるから、ほんのちょこっとは良い人なんだろうな、とは思うよ。ただ、女子の群れが話しかけてもスルーって鋼すぎて笑う」


他のクラスからの修の様子を初めて聞く美紀は、なんだかもどかしい気持ちになった。
ランチバッグのチャックを閉じると、少し笑みをこぼした。


「…黒井くん、何考えてるかわかんないし、目とか雰囲気は少し怖いけど…本が好きで、本友達になったよ!…良い人だよ」

「本友…?」

「うん!放課後に本、貸そうと思って…」

「ふ~ん?本好きの美紀からしたら、嬉しいね」

「……うん」


照れくさそうに笑う美紀が、小さく頷くのを見ると、莉奈はニコッと笑った。
スマホで時間を確認し、お互いに立ち上がると、各々の教室へ戻る。


教室に戻り、自分の席に着くと、数人の男女と談笑していた亮太が立ち上がって、美紀のもとにやってきた。


「ほい」

「え…?」

「今朝のお礼。先生に褒められたの、押花ちゃんのおかげ」

「そ、そんなこと…!」

「まだ冷たいうちに飲みなねぇ」


美紀の机に桃のパックジュースを置いて、二パッと笑うと、談笑の輪に戻っていく。


「亮太、しれっと押花ちゃんの好感度上げにかかるのやめろよ~」

「あたしらの分は~?」

「ははっ、今度のバスケで負けたらおごるよ」


そんな会話を聞きながら、桃のジュースに視線を落とす美紀。
ハッと時間を思い出して、急いでストローを差して飲み始めた。


(美味しい…桃…)


甘い味にほっこりしてしまうと、自然と笑みを見せる。